2.1 目標ヘモグロビン濃度
透析分野では、伝統的に貧血の指標にヘマトクリット値を使用することが多い。しかし、透析以外の分野では、ほとんどの場合、貧血の指標にヘモグロビン濃度を使用する。透析の分野でも、近年、ヘマトクリット値に代わってヘモグロビン濃度を使用する傾向にある。ヘモグロビン濃度に 3 を掛るとおおよそのヘマトクリット値が得られ、あるいはヘマトクリット値を 3 で割るとおおよそのヘモグロビン濃度が得られる。
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エポエチンアルファやエポエチンベータなどの遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤(rHuEPO)の開発により、腎性貧血の改善が可能となった
。 その後、ヒトエリスロポエチン製剤にもダルベポエチンアルファなどの第2世代が現れ、これにともなってヒトエリスロポエチン製剤(EPO)という名称に代わって第2世代をも包括する造血刺激因子製剤(ESA)の名称が用いられるようになった。
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■エポエチン アルファ (遺伝子組換え)epoetin alfa エスポー
■エポエチン ベータ
エポジン ■ダルベポエチン アルファ
ネスプ ■エポエチンベータペゴル
ミルセラ
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2008年版日本透析医学会「慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」では、週3回の血液透析を受けている患者に対して以下のようなESA 療法における目標ヘモグロビン濃度を推奨している[1]。 a. 週の最初の血液透析前に仰臥位で採血した場合、推奨する目標ヘモグロビン濃度は 10〜11 g/dL(ヘマトクリット値にして 30%〜33%)である。ヘモグロビン濃度が 12 g/dL(ヘマトクリット値にして 36%)を超えた場合には ESA を減量あるいは休薬する。 b. ESA の投与開始は、複数回の検査でヘモグロビン濃度が10 g/dL未満(ヘマトクリット値にして 30%未満)であった場合とする。 c. 活動性の高い比較的若年者では、目標ヘモグロビン濃度を11〜12 g/dL(ヘマトクリット値にして 33%〜36%)とする。ヘモグロビン濃度が 13g/dLを超えた場合には ESAを減量あるいは休薬する。ESA の投与開始は、複数回の検査でヘモグロビン濃度が 11 g/dL未満(ヘマトクリット値にして 33%未満)であった場合とする。 なお、心疾患を合併している患者では、高過ぎるヘモグロビン濃度で死亡のリスクが増大するとの報告がある。このような患者では、ヘモグロビン濃度が高くなりすぎないように気をつける必要がある。
4. 透析導入前の腎不全患者やCAPD患者の目標ヘモグロビン濃度 血液透析患者では非透析時における体重増加量の大小により血液の希釈程度が変動する。そして、2008年版日本透析医学会「慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」における血液透析患者のためのガイドラインは、これを考慮して作成されている。そのため、血液透析患者のガイドラインは、透析導入前の腎不全患者や CAPD 患者には適用できない 。 2008年版日本透析医学会「慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」では、透析導入前の腎不全患者や CAPD 患者に対する ESA 療法の目標ヘモグロビン濃度として、11 g/dL(ヘマトクリット値にして 33%)以上を推奨しており、ヘモグロビン濃度が 13 g/dL (ヘマトクリット値にして 39%)を超えた場合には ESAの減量あるいは休薬を考慮することになっている。ただし、重篤な心・血管系疾患を合併している患者では、ヘモグロビン濃度が 12 g/dL(ヘマトクリット値にして 36%)を超えた時点で減量あるいは休薬を考慮するべきであるとしている。
文献
1. 2008年版日本透析医学会「慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」 透析会誌 41(10): 661-716, 2008. |