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2.2 心疾患患者の目標ヘモグロビン濃度

1.大規模調査の結果
Besarabらは、うっ血性心不全あるいは虚血性心疾患を有する1233名の透析患者を無作為に2群に分け、一方の群の目標ヘモグロビン濃度を14g/dL(ヘマトクリット値にして42%)、他方の群の目標ヘモグロビン濃度を 10g/dL(ヘマトクリット値にして30%)として遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤(rHuEPO)を投与した(NHCT study)。ところが、目標ヘモグロビン濃度を14g/dL とした群で、目標ヘモグロビン濃度に到達する前に、すでに死亡率が有意に上昇したため、29ヶ月で研究は中止となった[1]。それぞれの患者群の中では、ヘモグロビン濃度が高いほど死亡率が低かったことから、高いヘモグロビン濃度のみが死亡率の上昇の理由とは考えにくいとされている[2]。

目標ヘマトクリット値と死亡・心筋梗塞のリスクの関係


一方、ヘモグロビン濃度の変動が心血管系合併症の原因であるとの報告もある[3]。例えば、ヘモグロビン濃度が急激に低下する際に心血管系の合併症が多発する。この結果は、エポエチン-アルファ、エポエチン-ベータ、ダルベポエチン-アルファなどの造血刺激因子製剤(ESA)の減量は緩徐におこなう必要があることを示唆している。



2.目標ヘモグロビン濃度
上記の結果は、うっ血性心不全あるいは虚血性心疾患を有する腎性貧血の血液透析患者に遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤を投与する際にも、目標ヘモグロビン濃度は通常どおりでよいことを示している。

 

 

 

文献

1. Besarab A, et al: The effects of normal as compared with low hematocrit values in patients with cardiac disease who are receiving hemodialysis and epoetin. N Engle J Med 339: 584, 1998.

2. Adamson JW, et al: Erythropoietin for end-stage renal disease (editorial). N Engle J Med 339: 625, 1998.

3. http://www.fda.gov/ohrms/dockets/ac/07/briefing/2007-4315b1-01-FDA.pdf. 11 Jun 2008.