23.2 膀胱癌
透析患者では、膀胱癌の発生率が健常人の16倍にも達するとの報告がある[1]。 膀胱癌を疑う最大の症候は肉眼的血尿である。無尿の患者では、尿道からの出血として認められる。しかし血尿は、尿路結石、尿路感染症、先天性嚢胞腎、後天性腎嚢胞でも認められることに注意しなければならない。 肉眼的血尿が認められた際には、尿の細胞診を行うとともに、腹部超音波検査、CTあるいはMRIによるスクリーニング検査を行い、後天性腎嚢胞性疾患、腎細胞癌などによる出血を否定する。透析患者の膀胱癌では、悪性度の高い腫瘍が多いので、尿細胞診の陽性率が高い。連続して3〜4回の尿細胞診検査を行う。無尿の患者では、膀胱洗浄液の細胞診を行う。 膀胱内視鏡検査は、膀胱癌の確定診断に必須の検査である。出血、感染に十分に注意しつつ施行することが大切である。生検を予定しているなら、膀胱内視鏡検査は非透析日に行う。 治療としては、根治的膀胱全摘出を行う。悪性度の高い進行癌が多く、膀胱全摘後の5年生存率は35%程度にすぎない。
文献 1. Chen KS, et al.: Urologic cancer in uremic patients. Am J Kidney Dis 25: 694-700, 1995.
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