透析百科 [保管庫]

26.1  注目している因子以外の因子による補正の必要性

至適透析(死亡のリスクを最小にする透析)を実現するためには、「死亡のリスクを最小にする値をそれぞれのパラメータについて決定することが必要である。「死亡のリスクを最小にするそれぞれのパラメータ値」は、通常、多数の患者のある時点における様々なデータと一定期間後の死亡の有無に基づいて数学的に決定される。しかし、死亡率を死亡のリスクと読みかえて、「それぞれのパラメータ値と死亡率との関係」を基にそれぞれのパラメータ値の目標域を決定してはならない。その理由を、Kt/Vを例に以下に述べる。

図には、Kt/V値により患者をグループ分けし、それぞれの群における患者の死亡率を棒グラフで示し、さらに、それぞれの群における平均のnPCR値を折れ線グラフで示してある。図が示すように、Kt/V値が低いほどnPCR値も低い。ところが、すでにnPCR値が低い患者では死亡率の高いことがわかっている。したがって、図に示すように、Kt/V値が低いほど死亡率が高いのは、Kt/Vが死亡の危険因子であるためなのか、あるいはKt/V値が低いほどnPCR値が低いため、単にKt/V値と死亡率との関係にnPCR値と死亡率との関係が投影されていて、あたかもKt/Vが死亡の危険因子であるかのようにみえているだけなのか、両者を区別することができない。このような理由で、Kt/V値がある範囲内にある患者群での死亡率を単純にKt/V値がその範囲内にある任意の患者の死亡のリスク値としてはならない。nPCRと死亡のリスクとの関係についても同様である。

そのようなわけで、様々なパラメータの値と死亡のリスク値との関係を推定する際には、問題としているパラメータ以外のパラメータの影響を排除するために、しばしばロジスティック回帰分析法が用いられる。

ロジスティック回帰分析法に続く。
Tweet
シェア
このエントリーをはてなブックマークに追加