透析百科 [保管庫]

25.3 停電


1. 指揮系統と各スタッフの役割

予め、停電が発生した際のリーダーと各スタッフの役割を決めておく。さらに、全スタッフが初期対応の手順を理解し、日頃より停電時の訓練をしておく。夜間の停電に備えて懐中電灯を準備しておく。
実際に停電が発生した場合には、休息中のスタッフがいれば呼び出して人員を確保する。
リーダーの指示の下、各スタッフが予め決められている以下の役割を分担する。

(1)停電の原因を調査する係り(例:臨床工学技士1名)

(2)患者に停電の原因や推定の停電時間などを知らせる係り(例:医師、看護師あるいは看護助手1ないし2名)

(3)ベッドサイドモニターを操作する係り(例:その他のすべてのスタッフ)




2. 各スタッフの行動指針

停電の原因を調査する係の者は、(1)停電が透析室内に限局するのか、(2)施設に限局するのか、あるいは(3)地域全体の停電かを確認し、停電がどの程度続くのか推測してリーダーに伝える。地域全体の停電の場合には、電力会社と連絡をとり、送電が再開するまでの推定時間を聞く。
患者に情報を伝える係りの者は、停電の原因や停電時間の推定値などの最新の情報を、その都度、患者に伝え、安心させるように努力する。必要に応じて家族との連絡をとる。
リーダーはまず、停電の発生した時刻を記録する。次に、ベッドサイドモニターを操作する係りの者に、異常濃度の透析液の流れる恐れがあるのでカプラをダイアライザーから外し、ダイアライザーの透析液流入・流出口をキャップするように指示する。さらに、推定停電時間に応じて、以下の4つのいずれかを指示し、ベッドサイドモニターを操作する係りの者は、これにしたがってベッドサイドモニターを操作する。
医師は、状態の急変した患者の発生に気を付け、そのような患者が発生したら適切な処置を行う。

a. 停電時間が推定できない場合、あるいは停電時間が15分以内と見込まれる場合

透析装置内蔵のバッテリーを使用して、血流100 ml/分程度で血液を体外循環させておく。なお、透析装置内蔵のバッテリーは30〜40分しかもたないので、バッテリーが切れる前に返血を終了しておかなければならないことを心に留めておく。バッテリーがない機種では、手動でゆっくりと血液ポンプを回す(15分間が限度)。
送電が再開すれば透析を再開する。

b. 停電した時点で停電時間が15分以上であると推定される場合、あるいは停電が長引き、すでに15分以上続いている場合

透析装置内蔵のバッテリーがある場合でも、これがない場合でも、回路内の血液を生理的食塩水に置き換え、鉗子で静脈側回路をクランプして送電の再開を待つ。待っている間に、患者のバイタルサインをチェックし、一般状態を観察して記録する。
送電が再開すれば、血液回路内に凝血塊がないことを確認してから、ゆっくりと血液ポンプを回し、透析を再開する。

c. 停電した時点で停電時間が30分以上であると推定された場合、あるいは停電が長引き、すでに30分以上続いている場合

最初から停電が30分以上続くと推定されている場合には、医師の合意の下で、透析装置内蔵のバッテリーを使用して、あるいは手動で透析を終了する。一方、停電はより短時間であると推定されたために、回路内の血液を生理的食塩水で置き換えて送電の再開を待っていた場合にも、停電の発生から30分以上経過していれば、医師の合意の下で動脈側穿刺針と静脈側穿刺針を抜去して透析を終了する。
その後、次回の透析のスケジュールを立て、患者を帰宅させる。当日に透析が必要な患者では、近隣透析施設へ受け入れを要請する。