31.1 ボタンホール穿刺法とは
1. ボタンホール穿刺法とは?
ボタンホール穿刺法とは、皮膚表面とシャント血管壁との間にボタンホール穿刺ルート(固定穿刺ルート)を作成し、先端が鈍いダルニードルでこのボタンホール穿刺ルートを通してシャント血管を穿刺する穿刺法である。ダルニードルはボタンホール穿刺ルートを通ってシャント血管壁に達した後、シャント血管壁上の穿刺孔を通ってシャント血管内に入る。
2. ボタンホール穿刺法の長所
ボタンホール穿刺法では、穿刺の際の痛みが少なく、またシャント血管の寿命が延長する [1-4]。さらに、透析終了時の抜針後の止血時間が短いのもボタンホール穿刺法の特徴のひとつである。
3. ボタンホール穿刺法の問題点
ボタンホール穿刺法には以下に述べる問題点がある。
a. トランポリン現象
ダルニードルがボタンホール穿刺ルートを通ってシャント血管壁に達したにもかかわらず、その先端がシャント血管壁上の穿刺孔を探り当てることができない現象を海外ではtrampoline
effect(トランポリン現象)と呼ぶことがある。
欧米に比べて日本ではトランポリン現象の発生頻度が著しく高い。そのため、日本では現時点ではボタンホール穿刺法はほとんど普及していない。
b. 感染
ボタンホール穿刺法では、通常穿刺法に比べてシャント感染が多いと報告されている [5-6]。
c. 問題解決
別の項で述べるように、トランポリン現象とシャント感染という二つの問題はほぼ解決されたと考える。
文献
1. Twardowski Z, Lebek R, Kubara H: Six-year experience with the creation and use of internal arteriovenous fistulae in patients treated with repeated hemodialysis [in Polish]. Pol Arch Med Wewn. 57: 205–214, 1977.
2. Scribner BH: Circulatory access: still a major concern. Proc Eur Dial Transplant Assoc. 19: 95–98, 1983.
3. Scribner BH: The overriding importance of vascular access. Dial Transplant. 13: 625, 1984.
4. Krönung G: Plastic defonnation of Cimino fistula by repeated puncture. Dial Transplant. 13: 635–638, 1984.
5. Nesrallah GE et al: Staphylococcus aureus bacteremia and buttonhole cannulation: Long-term safety and efficacy of mupirocin prophylaxis. Clin J Am Soc Nephrol. Jun 5: 1047–1053, 2010.
6. Gray N: The risk of sepsis from buttonhole needling must be appreciated. Nephrol Dial Transplant 25: 2385-2386, 2010.