b. 新たに開発された拡張針を使用する
旭化成メディカル社は、長期間使用したために狭窄が進行したボタンホール穿刺ルートを拡張し、あるいは新たに作成したボタンホール穿刺ルートのシャント血管壁上の穿刺孔を拡張するためのボタンホール穿刺用拡張針を
開発した。
1) ボタンホール穿刺用拡張針の形状
ボタンホール穿刺用拡張針は、図 3
に示すように、カット面を上向きにして正面から見ると、先端は鈍で、かつ側縁は通常のシャープ針と同様に鋭利である。このようにボタンホール穿刺用拡張針は先端が鈍であるため、シャープ針の穿刺ルート跡に挿入しても針の先端が穿刺ルートの壁に突き刺さってこれを傷つけるリスクが小さい。一方、カット面の側縁が鋭利であるため、これをシャープ針の穿刺ルート跡に挿入すると、シャープ針の穿刺ルートは横に切り拡げられ、シャント血管壁上の穿刺孔も拡張する。
ボタンホール穿刺用拡張針には、前回の透析で使用したシャープ針や今後使用するダルニードルの外径よりも太い外径のものを使用する。実際には、通常穿刺で使用するシャープ針やボタンホール穿刺で使用するダルニードルの外径は
17G あるいは 16G であるという前提の下、現時点では 15G のボタンホール穿刺用拡張針が作製されている。
2) ボタンホール穿刺用拡張針の臨床評価結果
我々は、ボタンホール穿刺用拡張針を臨床的に使用した。
その結果によると、17G シャープ針の穿刺ルート跡に次の透析で 17G のダルニードルを挿入した場合のトランポリン現象の発生頻度は 87%
であった。これに対し、17G のシャープ針の穿刺ルート跡に次の透析で 15G のボタンホール穿刺用拡張針を挿入し、さらにその次の透析以降 17G
のダルニードルを使用してボタンホール穿刺をおこなった場合にはトランポリン現象の発生頻度は 21% であった。