透析百科 [保管庫]

31.3 バイオホールスティック

1. バイオホールスティックとは?

Twardowski [1]は、同一の医療スタッフが同一部位を長期間反復穿刺すれば、ボタンホール穿刺ルートが形成され、一旦ボタンホール穿刺ルートが形成されれば、その後は不特定のスタッフでも容易にボタンホール穿刺ができると報告した。しかし、ボタンホール穿刺ルートが完成するまでの 2 〜4 週間、熟練した同一のスタッフがシャント血管の穿刺を担当するのは現実的ではない。そこで、同一のスタッフが穿刺を担当しなくてもボタンホール穿刺ルートができるように、長さが 5mm の血管表面近くにまでしか到達しない、先端が鈍く反対端にはストッパーとして直径が 3mm の球が接着されている画鋲型のスティック(バイオホールスティック;ニプロ株式会社)が発売されている(図1)。

 

  図1:バイオホールスティック

2. バイオホールスティックの使用法

通常の血液透析の終了後であってシャープ穿刺針を抜去した後、止血が完了したら、バイオホールスティックを穿刺針の抜去跡に挿入・留置する(図2)。

バイオホールスティックの元々の使用説明では、シャープ穿刺針の抜去跡に挿入したバイオホールスティックは、透析ごとに新しいものと取り替えつつ10日間留置することになっている。しかし、最近は次の透析までの 2 日間、シャープ穿刺針の抜去跡にバイオホールスティックを留置するだけのことも多いようである。

 

図2:シャープ穿刺針の抜去跡へのバイオホールスティックの挿入
 

最後に、図3に示すように、このようにして形成されたボタンホール穿刺ルートに沿って、シャープ穿刺針をアクセス血管内まで挿入することにより、ボタンホール穿刺ルートをアクセス血管内に開通させる。以後は、このボタンホール穿刺ルートに沿ってダルニードル(先端が鈍な穿刺針)をアクセス血管内に挿入し、これを通して体外循環を行う。
図3:バイオホールスティックを抜去した直後の穿刺部位の様子

3. トランポリン現象の防止

バイオホールスティックを利用するボタンホール穿刺ルートの作成法は、あくまでも皮膚表面からアクセス血管壁までの間のボタンホール穿刺ルートを簡単に作成する方法であって、アクセス血管壁にトランポリン現象が生じにくい穿刺孔を形成する方法ではない。したがって、ボタンホール穿刺ルートをバイオホールステイックを使用して作成したからといって、トランポリン現象の発生頻度が減少するわけではない。

トランポリン現象の発生頻度を減少させるためには、バイオホールスティックを新しいものと交換するたびに、ダルニードルではなくシャープ穿刺針でバイオホールスティックの抜去跡の穿刺ルートを通してアクセス血管を穿刺するか、あるいはバイオホールスティックの抜去跡の穿刺ルートを通して 1 度だけ拡張針でアクセス血管を穿刺するか、いずれかの方法をとらなければならない。

 

 

 

文献

1.     Twardowski Z: Buttonhole method for needle insertion into A-V fistula. Nephrol. Dial. Pol. 10, 156-158, 2006.


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