この方法では被覆材を剥がすまでは被覆材がボタンホール穿刺ルートへの細菌の侵入を阻止するバリアとして機能するが、被覆材を剥がした後は痂疲
が、そして痂疲を除去した後は新たに形成された角化層が、細菌の侵入を阻止すると思われる。
もし透析の前夜に入浴しなかった場合には、透析のため来院した際、アクセス血管のある腕を洗う時に同様な方法で痂疲を除去する。ただし、この場合には痂疲が十分に水分を含むまで、腕
の穿刺部を水に浸しておかなければならない。
(6) 次の透析時には、穿刺部を100倍に希釈したイソジン液あるいは
J-ヨード液で消毒し、その後、穿刺孔の上に形成された角化層を貫いてボタンホール穿刺をおこなう。穿刺孔の上に形成された角化層を貫くのに適した、先端がやや細くなっているダルニードル(商品名:スマート ダルニードル、旭化成メデイカル株式会社製)が開発されている。
b. 浸潤療法による穿刺孔処置の簡易法
上記の滅菌被覆材を使用する湿潤療法(皮膚の損傷の後に施行される一般的な湿潤療法)では、しばしば被覆材を貼付した部分にかぶれが生じる。また、穿刺部の処置に関する操作も複雑であり、さらに滅菌被覆材を使用するために治療コストが上昇する。これらの問題を解決するため、簡易湿潤療法が工夫されている。
c. 痂疲の除去程度
ボタンホール穿刺ルートの作成後、まだ時間が経っていない穿刺部では、湿潤療法で処置することによって破片を残すことなく、ほぼ完全に痂疲を除去することができる。しかし、長期間
、通常の処置を行った穿刺部に対して湿潤療法を適応した場合には、上記の方法で痂疲の除去を試みても、しばしばわずかな破片が残ってしまう。このような穿刺部にさらに湿潤療法による処置を続ければ、やがて痂疲を完全に除去することができるようになる
のか否か、現時点では明らかではない。
尚、図4に示す痂疲除去後の穿刺孔は、ボタンホール穿刺ルートの作成後、まだ1ヶ月間程度しか経っていない穿刺孔である。