13.3 穿刺ミス
1.穿刺の失敗は血腫の出現で気づくことが多い。しかし、シャント血管の後壁を穿刺針で貫いたためにシャント血管の裏側に生じた血腫には気づかないこともある。
2.血腫が形成されたら抜針し再穿刺する。
3.血腫が存在していてもプラスチック外筒付き穿刺針を血管腔へ挿入することは可能ではあるが、血管を穿刺針で探るような操作は避け、一度抜針して再度穿刺を試みることをすすめる。
4.体外循環開始後に血腫の出現する事もある。透析開始直後には充分な観察が必要である。特に、作製後間もないシャント血管の壁は薄く血腫を作りやすい。体外循環開始後に血腫が認められたら、シャント血管の穿刺部を清潔なガーゼで軽く15分程度圧迫する。血腫が増大する傾向にあれば抜針する。
5.穿刺針がシャント血管腔内に正確に刺入されていても、穿刺針内に凝血塊や切り取られた皮膚、痂皮が詰まっている場合には血液の逆流が認められない。穿刺針がシャント血管腔内に正確に刺入されたという感触があるにもかかわらず血液の逆流が認められない場合には、まず注射器で血液を引いてみるか、あるいは注射器で少量のヘパリン生食を注入してみる。ヘパリン生食の注入により皮下に膨隆を認めたら、穿刺の失敗と考えて抜針する。
6.血管壁内あるいは内膜肥厚部へプラスチック外筒が位置している場合や、屈曲部で血管壁にプラスチック外筒の先端が触れている場合には、血流不良や静脈圧の上昇を来す。このような場合には、プラスチック外筒を少し引いたり、向きを変えたり、向きを変えたうえでプラスチック外筒を少し前方に進めてみる。これにより静脈圧の低下や血流の確保が可能になることもある。
7.穿刺中に穿刺針の穿刺角度を変更すると、プラスチック外筒への血液の逆流の有無を確認するために金属内筒針を引き出した後に、皮下の軟部組織中でプラスチック外筒がカーブすることがある。穿刺中に穿刺針の穿刺角度を変更した場合には、金属内筒針を引き出した後、これを再び血管内腔に押し戻そうとしてはならない。プラスチック外筒の折れ曲がりは、外筒を回転させながら指で修復を試みると回復することがある。
8.穿刺に失敗した時は、誤魔化さず、患者にはっきりと詫びる。