13.1 血管穿刺の要点
シャント血管穿刺の要点を以下にまとめる。
1.穿刺時の患者の体位、腕の位置などに合わせて、スタッフは無理のない姿勢をとる。
2.駆血部位が穿刺部から遠すぎないようにする。
3.吻合部より2cm以上中枢側を穿刺する。穿刺針の固定のため刺入長は少なくとも1.5cm程度欲しい。
4.シャント血管上の皮膚のたるみ、皮膚の厚さ、皮膚の堅さを確認し、これらを念頭において穿刺する。
5.血管の走行と可動性、深さ、堅さ、壁の厚さ、狭窄の程度などを触診で確認し、あるいは問題としている患者の穿刺を以前に行ったことのあるスタッフから、これらに関する情報を得ておく。老人の血管は一見、穿刺しやすくみえるが、血管壁は脆弱で漏れやすく、移動しやすい。このような場合には、他のスタッフに指でシャント血管を中枢側で圧迫してもらい、かつ血管を中枢側へ引っ張ってもらう。これによりシャント血管は怒張し固定される。
6. 血管が屈曲あるいは蛇行しているときは、血管をよく伸展させてから穿刺する。すなわち、他のスタッフに指でシャント血管を中枢側で圧迫してもらい、かつ血管を中枢側へ引っ張ってもらい、同時に術者は血管を圧迫しながら末梢側に引き、45度以上の角度で穿刺する。血管が左右に動くときは2本の指で血管の外側で皮膚を圧迫する。
7.静脈弁が邪魔にならない部位を穿刺する。静脈弁の位置を知るには、まず吻合部近くを充分駆血し、血流を止めた状態を保つ。次に、指で皮膚の上から血管内の血液を中枢側へ送る。この状態で突然に指を離すと、中枢側の側枝から流れ込んだ血液は静脈弁で止まり、静脈弁より中枢側で血管は拡張し末梢側では虚脱する。すなわち、静脈弁の部分は血管のくびれとして視認できる。このようにして明らかにした静脈弁の部位を触診し、静脈弁の感触を記憶しておくと、前記の操作をしなくても静脈弁の位置を発見できるようになる。単純に駆血したとき、血管の拡張が不十分な、いわゆるくびれがあれば、それは静脈弁である可能性が高い。狭窄部は静脈弁の部位に比べて索状で堅く、その範囲が広い。
8.狭い範囲を反復して穿刺することを避け、なるべく広い範囲で毎回穿刺部を変える。ただし、ボンタンホール穿刺については、この原則があてはまらない。