14.1 静脈圧上昇の原因
1.
静脈圧上昇の原因のひとつに、静脈側クランプの解除忘れがある。特に複数のスタッフが透析開始操作に関わるときに生じやすい。
2. 不適切な穿刺針の位置や向きは、静脈圧上昇の原因となりうる。シャント血管が屈曲、蛇行、狭窄しているとき、穿刺位置が静脈弁のある部位だったとき、あるいは穿刺針を血管壁内に留置したときに静脈圧が上昇する(図1, 2)。
図1 静脈圧上昇の原因1 |
図2 静脈圧上昇の原因2 |
3.
穿刺針の先端に血栓や痂皮が入り込んだとき。
4.
静脈側(返血側)血液回路チャンバーの凝血。
5.
ヘパリンの注入忘れ。
6.
血液ポンプが高速回転すると静脈圧は上昇する。意図的に血液ポンプを高速回転させたことによる場合よりも、血液流量の設定ミスによる場合の方が多い。
7.血流量に見合わない太さの穿刺針を静脈側に使用しているとき。静脈側穿刺針の太さと血流量により静脈圧は異なる(表、図3)。
8.AT IIIの欠乏、凝固能の亢進。
静脈圧が高いと、血液ポンプではローラーからローラーへ回路のしごき操作が受け渡される瞬間に血液の逆流が生じ(backlash)、そのため実際の血流量は減少する。
図3 穿刺針別の血流量と静脈圧の関係
V側穿刺針の種類 | Qb (ml/min) | 100 | 150 | 200 | 230 | 250 | |
16G-Argyle |
静脈圧(mmHg) n |
29.6 35 |
70.5 35 |
112.6 35 |
137.4 31 |
155.9 28 |
|
17G-DullNeedle |
静脈圧(mmHg) n |
39.2 25 |
82.8 25 |
129.6 25 |
148.5 24 |
157.7 20 |
|
17G-AVF |
静脈圧(mmHg) n |
55.2 5 |
97.6 5 |
140 5 |
168.2 5 |
192.4 5 |
|
17G-Argyle |
静脈圧(mmHg) n |
59.9 7 |
120.3 7 |
188.3 6 |
212.5 4 |
238.8 4 |