19.3 ヘリコバクター・ピロリの除菌療法
1.
ヘリコバクター・ピロリ の感染による消化器疾患
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2.
ヘリコバクター・ピロリ の除菌療法の適応
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3.
ヘリコバクター・ピロリ 感染の診断 a.
迅速ウレアーゼ試験 b.
鏡検法 c.
培養法 d.
尿素呼気試験 e.
血清・尿中抗体測定法 f.
便中のヘリコバクター・ピロリ抗原の検出[1.2]
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4. ヘリコバクター・ピロリ 感染症の治療 ヘリコバクター・ピロリ の除菌は、プロトンポンプ阻害薬による酸分泌抑制と抗生物質投与の組み合わせにより行う。 通常、腎機能が正常な成人には1回あたり30mgのランソプラゾールを1日2回、あるいは1回あたり20mgのオメプラゾールを1日2回、かつ1回あたり750mg(力価)のアモキシリンを1日2回、さらに1回あたり200mg(力価)のクラリスロマイシンを1日2回、それぞれ7日間経口投与する。なお、クラリスロマイシンは、必要に応じて適宜増量することができる。ただし、1回400mg(力価)1日2回を上限とする。 透析患者におけるヘリコバクター・ピロリの除菌のための薬物投与量について記載された文献はないが、排泄経路などを考慮すると以下のような投薬スケジュールが考えられる。すなわち、透析患者については、1回あたり30mgのランソプラゾールを1日2回あるいは1回あたり20mgのオメプラゾールを1日2回、かつ1回あたり750mg(力価)のアモキシリンを1日1回(透析日は透析後に)、さらに1回あたり200mg(力価)のクラリスロマイシンを1日1〜2回(透析日は透析後に)、それぞれ7日間経口投与する。
5. ヘリコバクター・ピロリの除菌療法の効果の確認 除菌療法が成功したか否かを判定するためには、除菌療法終了4週間後以降に前述の方法によりヘリコバクター・ピロリの感染がなお続いているか否か調べる。ただし抗体価については、たとえ除菌療法が成功していても完全には陰性化していないことがある。 除菌されない原因としては、クラリスロマイシン耐性、喫煙、内服の中断や飲み忘れ等の服薬コンプライアンスの低下が考えられる。 前述の薬剤で除菌されない患者に対しては、違う薬剤を用いて再度除菌を試みる。
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■ランソプラゾール
タケプロン (武田) ■オメプラゾール
■クラリスロマイシン
■アモキシリン
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6. 3剤併用療法のヘリコバクター・ピロリの除菌率 3剤併用療法のヘリコバクター・ピロリの除菌率は、腎機能が正常な胃潰瘍の患者では89.2%、十二指腸潰瘍の患者では83.7%であると報告されている。
7. ヘリコバクター・ピロリ の除菌療法の副作用 1. 除菌療法により、軟便(13.7%)・下痢(9.1%)などの消化器症状や味覚異常を起こすことがある。 2. ヘリコバクター・ピロリの除菌成功例の10%程度に軽度の逆流性食道炎が発生するとの報告がある。これは、胃粘膜萎縮の強い胃潰瘍や胃炎のために低下していた胃酸分泌がヘリコバクター・ピロリの除菌により改善(正常化)することが一因であると考えられている。
文献 1. 伊藤喜久、他:医学と薬学 44(1): 137-142, 2000. 2. 福田能啓、他:Current Therapy 18(9): 105-109, 2000.
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