19.7 急性胃炎
1. 疾患概念 胃粘膜に表層性の浮腫、充血、出血、壊死、びらん等の変化が認められる病態を急性胃炎と呼ぶ。これらのうち、内視鏡検査において、急性出血性胃炎、出血性びらん、急性潰瘍を認めるものを、とくに急性胃粘膜病変(AGML)と呼ぶ。急性出血性胃炎、出血性びらん、急性潰瘍は、しばしば同一の胃に混在してみられる。そこで、それぞれを区別するよりも、これらをまとめて急性胃粘膜病変(AGML)とするほうが病態を正確に把握できるとの理由でこの名称が付けられている。
2. 原因 急性胃炎は、外因性胃炎と内因性胃炎にわけると理解しやすい。 a. 外因性胃炎 極端に熱い飲み物、冷たい飲み物を多量に摂取した場合(いわゆる暴飲暴食)、カレーやコーヒー、わさびや唐辛子などの刺激物を多量に摂取した場合、アルコール飲料を飲みすぎた場合(二日酔いにおける心窩部痛や悪心などがこれにあたる)、アスピリンを含む非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)や抗生物質などの薬剤を服用した場合などに生じる胃粘膜の急性炎症が外因性胃炎である。その他、精神的・肉体的ストレスや過労、睡眠不足が急性胃炎の原因となることもある。 農薬や毒物などを飲んだ場合には、胃粘膜だけでなく、口から食道に至る消化管粘膜も傷害され、これらの部位に一致して激しく焼けるような痛みが生じる。このような急性胃炎はとくに、急性腐食性胃炎と呼ぶ。 b. 内因性胃炎 内因性胃炎は、急性感染性胃炎、急性化膿性胃炎、アレルギー性胃炎の3つに分けられる。 1)
急性感染性胃炎 2)
急性化膿性胃炎 3)
アレルギー性胃炎
3. 症状 典型的には、原因があってから数時間以内に鈍痛から激痛に至るまでの様々な程度の心窩部痛、悪心、嘔吐が出現する。ときに吐血のみられることもある。 これらの症状は、原因が除去されれば、自然に消退する。なお、農薬や毒物を飲んだときに生じる急性腐食性胃炎では、口から咽頭、胃にかけて、激しく焼けるような痛みが出現する。
4. 診断 鑑別すべき疾患には消化性潰瘍と胆道・膵臓疾患がある。胆道・膵臓疾患を除外するためには、生化学検査データでトランスアミナーゼやアミラーゼの上昇がないこと、腹部超音波検査で肝臓、胆道、膵臓に所見がないことを確認する。消化性潰瘍との鑑別のためにも内視鏡検査を行う。
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5. 治療 まず、原因を除去する。しばしば急性胃炎を発症するようであれば、食生活に原因があるのではないかと疑う。そのような場合には、暴飲暴食をつつしむように指導し、刺激物やアルコールの摂取を控えさせ、あるいはストレス解消法を工夫させるなど、生活全般の見直しをはかる。 悪心、嘔吐、吐血がある場合には、可能なら1〜2食ほど絶食させ、輸液による栄養補給を行う。あるいは、豆腐、プリンなどの消化のよい食事を摂るように指示する。 薬物療法としては、原因によらず、制酸薬、ヒスタミンH2受容体拮抗薬(薬)あるいはプロトンポンプ阻害薬(薬)を投与する。
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■オメプラゾール
■ランソプラゾール ■ラベプラゾール
≪ヒスタミンH2ブロッカー≫ ■ファモチジン ■ニザチジン |