透析百科 [保管庫]

15.3  オリジナルpush/pull HDF

push/pull HDF は、血液透析をおこないつつ、ヘモフィルタ−にて濾過と逆濾過とを交互に生じさせることを特徴とする。すなわち、 push/pull HDF では、まず on-line HDF と同様に容量制御方式のコンソ−ル(UFコントロ−ラ−)を使用することにより透析液回路を密閉系とする。次に、ポンプを用いて密閉系である透析液回路内から一定量の透析液を系外に引き出すことによって透析回路内に陰圧を発生させ、血液側から透析液側へ濾過を生じさせる。続いて、直前の濾過行程で一旦系外に引き出した透析液を透析回路内に押し戻すことによって、透析回路内に逆に陽圧を発生させ、逆濾過の形で置換液としての透析液を体内に移行させる。

の原理に従って、多くの push/pull HDF 装置が開発された。それらの中で最初に開発されたオリジナル push/pull HDF 装置では[1,2]、ローラーポンプにより密閉系透析液回路から系外へ透析液を引き出し、次いでローラーポンプを逆回転させることにより密閉系透析液回路内へ透析液を押し戻す。オリジナル push/pull HDF 装置では、これにより濾過および逆濾過があらかじめ設定された速度で交互に行われる。ところが、治療の進行に伴ってヘモフィルタ−の透水性が低下し膜間圧(TMP)が許容範囲を超えて上昇することがある。そこで、オリジナル push/pull HDF 装置では必要に応じて濾過速度を再調整しなければならない。これは、オリジナル push/pull HDF 装置の操作性を悪くする要因となる。

オリジナル push/pull HDF では、比較的大量の濾過と逆濾過の繰り返しによって生じる静脈回路内の血流量の変動を吸収するのに、リザーバーとしてディスポーザブルの血液バッグが使用される。したがってオリジナルpush/pull HDF では、圧制御式push/pull HDF よりも治療コストが高くなる。

オリジナル push/pull HDF では、比較的大きな容量の濾過と逆濾過が交互に繰り返される。そこで例えば、200 秒の間に 200 ml の濾過が生じ、続いて 40 秒の間にほぼ同量の逆濾過が生じると仮定すると、通常血液がヘモフィルタ−を通過するのにおおよそ 40 秒を要するので、オリジナル push/pull HDF では、血液は濾過により一度濃縮されて後に希釈されることになる。したがって、オリジナル push/pull HDF は機能的には後置換方式のon-line HDFに近い。
オリジナル push/pull HDF の臨床効果については別の項で述べる。

 

 

 

文献

1.Usuda M, et al.: New simultaneous HF and HD with no infusion fluid. Trans Am Soc Artif Intern Organs, 28: 24-27, 1982.

2.Maeda K, et al.: Push/pull hemodiafiltration: Technical aspects and clinical effectiveness. (Editorial review) Nephron 71: 1-9, 1995

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