15.5 圧制御式 push/pull HDFの膜間圧制御方法
圧制御式 push/pull HDF では、療法中に安全域内で最大の膜間圧が自動的に維持されるように工夫されている[1]。図1に示すように、D-ポンプの透析液側シリンダ−内圧(Pd)は透析液回路内圧に等しく、血液側シリンダ−内圧は血液回路の静脈チャンバ−内圧(Pb)に等しい。すなわち、この2つの圧の差は、ほぼTMPに等しい。すなわち、D-ポンプのピストンは、ピストンの断面積(S)とTMPの積に等しい大きさの力に逆らって運動をしていることになる。ピストンの動作に逆らう力をFとすると、この関係は以下の式で表される。
ここで、モ−タ−の出力、すなわちピストンの動作に逆らう力はモ−タ−を流れる電流量に依存する。一方、式(2)にはピストンの断面積(S)とピストンの動作に逆らう力(F)以外の因子は含まれておらす、かつSは定数である。そこで、モ−タ−に流れる電流量を適切なレベルに調整することによりFだけを制御すれば、透析膜の透水性の変化やヘマトクリット値の変化などの治療中の様々な条件の変化に影響されることなくTMPを目標のレベルに維持することができることになる。さて、モ−タ−に連結されているカムのトルクは、カムの回転角度に影響される。そこで 圧制御式 push/pull HDF 装置では、カムの回転角度に対してサインカ−ブを描くようにモ−タ−に流れる電流量を自動調整しており、これにより治療中の諸条件の変化とは無関係にTMPが一定のレベルに維持されるようになっている。 |
文献
1. Shinzato T, Fujisawa K, Nakai S, Miwa H, Kobayakawa H, Takai I, Morita H, Maeda K: Newly developed economical and efficient push/pull hemodiafiltration. Contrib Nephrol, 108: 79-86, 1994.