15.9 β2-ミクログロブリンに関するKt/V
Odellらは、血液透析中に患者にアイソトープでラベルしたβ2-ミクログロブリン を投与し、その動態を調べた[1]。その結果、血液透析患者ではβ2-ミクログロブリン は3つのcompartmentに分布することを発見した。図1には、Odellらのβ2-ミクログロブリン kinetic modelを、表1にはそれぞれのcompartmentの容積とcompartment間のβ2-ミクログロブリン クリアランスを示す。また、以下にはOdellらのβ2-ミクログロブリン kinetic modelを数学的に示す。V1dC1/dt = - (K01+K12+K13)C1+K12C2+K13C3+G | (1a) |
V2dC2/dt = K12C1- K12C2 | (1b) |
V3dC3/dt = K13C1-K13C3 | (1c) |
K01 = Knr+Kr+Kd | (1d) |
ここで、Knr、Kr(= 0)およびKdは腎外クリアランス、腎クリアランスおよびダイアライザークリアランス、K01は総クリアランス、K12およびK13はcompartment間のクリランス、V1、V2およびV3は各compartmentの容積、C1、C2およびC3は各compartmentにおけるβ2-ミクログロブリン 濃度AそしてGはβ2-ミクログロブリン 産生速度を示す。
この方程式を解くことにより、以下のβ2-ミクログロブリン に関するKt/Vを算出する式が得られる[2]。
P3 = −3.0655×(T/10)3 − 1.5075×(T/10)2 − 1.0565×(T/10) + 0.029237
P2 = 3.3489×(T/10)3 + 3.2598×(T/10)2 + 2.7243×(T/10) + 0.024751
P1 = −1.2624×(T/10)3 − 1.0501×(T/10)2 − 3.2578×(T/10) − 0.28329
P0 = 0.39808×(T/10)3 − 0.52439×(T/10)2 + 1.5321×(T/10) + 0.23500
Kt/Vcon = 2×(P3×R3 + P2×R + P1×R +P0) | (2) | |
5・ΔBW/BW・ {T/(72−T)+1} ・ ln(R) |
||
Kt/Vvaria = Kt/Vcon + |
──────────────── |
(3) |
R− 1 |
ただし、これらの式は、β2-ミクログロブリンのダイアライザークリアランスが0.05 ml/min/kgから2.0 ml/min/kg の範囲、かつ治療時間が2時間から6 時間の範囲で有効である。
BW:体重(通常透析後体重:kg)
ΔBW:体重増加量(:kg)
T:透析時間(hour)
R:透析後β2-ミクログロブリン 濃度/透析前β2-ミクログロブリン 濃度
Kt/Vcon:constant-volume model によるKt/V
Odellのモデルを解析することにより、同一量のβ2-ミクログロブリン を除去した場合におけるKt/V、β2-ミクログロブリン 除去率およびβ2-ミクログロブリン のダイアライザークリアランスの関係を調べた。図2に示すように、β2-ミクログロブリン の除去量が7 mg/kgと一定の場合、ダイアライザークリアランスの大小にかかわらず、すなわち治療時間の長短にかかわらず、Kt/Vvariaはほぼ一定の値を示した。しかし、β2-ミクログロブリン の除去率はクリアランスが増大するとともに増大していった。これは、Kt/Vvariaでは治療後のリバウンドの影響が考慮されているのに対し、除去率ではこれが考慮されていないことによると思われる。
V1
(ml/kg) |
V2
|
V3
|
Vtotal
|
Knr
|
K12
|
K13
|
G
|
53 | 39 | 109 | 201 | 0.047 | 1.25 | 0.48 | 0.159 |
図2 |
文献
1. Odell RA, et al.: Beta2-microglobulin kinetics in end-stage renal failure. Kidney Int 39: 909-919, 1991.
2. 三輪真幹、新里高弘:血液透析におけるβ2-microglobulin kinetic modeling. 臨床透析 4: 453-458, 2001