透析百科 [保管庫]

27.4  芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)

組成・剤形・1日用量(メーカーにより規格が異なる)

 シャクヤク、カンゾウより抽出したエキスを製剤化

 細粒剤(4.5〜6g/日)、  顆粒剤(4.5〜7.5g/日)、

 

 芍薬甘草湯が有効な症状

1. 透析中の筋肉の痙攣(こむら返り)

山下は、透析中にのみ筋肉の攣縮が生じた透析患者 6例と透析中だけでなく透析後にも攣縮が生じた 1例に芍薬甘草湯を投与し、その効果を観察した[1]。前者 6例には透析前に 2.5g の芍薬甘草湯を投与し、後者 1例には1日あたり 7.5gを3回に分けて連日投与を行った。その結果、透析前に 2.5g の芍薬甘草湯を投与した群では 6例中 3例で筋肉の攣縮が消失し、残りの 3例では攣縮痛の軽減が認められた。一方、1日あたり 7.5g の芍薬甘草湯を3回に分けて連日投与した 1例では透析中の攣縮が軽減し、かつ透析後の攣縮が消失した。また、漢方薬投与で問題とされる血清カリウム値の有意な上昇はみられなかった。

室賀らは、透析中に筋肉の痙攣を頻回に訴える患者5例に対し、芍薬甘草湯を透析前に予防的に投与したところ[2]、有効が 2例、やや有効が 2例、無効が 1例であったと報告し、血清カリウム値の上昇などの副作用もなかったと報告している。

2. 肝硬変の筋痙攣・こむら返り

肝硬変に伴う筋痙の攣患の認められる患者を対象に行われた二重盲検群間比較試験では[3]、実薬群では 67.3%で筋痙攣回数が減少し、プラセボ群では 37.5%で筋痙攣回数が減少した(p=0.011)。副作用は実薬群では 14.3%に発生し、プラセボ群では 4.9%に発生したが、統計的には両群間に有意差はなかったとのことである。主な副作用は実薬群では偽アルドステロン症(血圧上昇、浮腫、血清カリウム値の低下)であった。

 

文献

1. 山下淳一:透析患者の透析中、透析後の筋攣縮痛に対するツムラ芍薬甘草湯の効果について. 痛みと漢方2: 18-20, 1992.

2. 室賀一宏、松井則明:透析患者の下肢の筋攣縮に対する芍薬甘草湯の使用経験. 日東医誌46(3) 467-469, 1995

3. 熊田 卓、熊田博光、与芝 真、他:TJ-68ツムラ芍薬甘草湯の筋痙攣(肝硬変に伴うもの)に対するプラセボ対照二重盲検群間比較試験. 臨床試薬15(3): 499-523, 1999.

 

参考

1.   芍薬甘草湯については、メーカーにより適応が異なる。以下に、小太郎漢方製薬株式会社、株式会社ツムラ他各社の示している芍薬甘草湯の適応をまとめる。

小太郎漢方:腹直筋緊張し、胃痛または腹痛があるもの。胆石症あるいは腎臓・膀胱結石の痙攣痛、四肢・筋肉・関節痛、薬物服用後の副作用の腹痛、胃痙攣、急迫性の胃痛

ツムラ・他:急激に起こる筋肉のけいれんを伴う疼痛

〔禁忌(次の患者には投与しないこと)〕

 1)アルドステロンの患者
 2)ミオパシーのある患者
 3)低カリウム血症のある患者

※1)〜3):これらの疾患及び症状が悪化するおそれがある。

〈用法・用量に関する使用上の注意〉

本剤の使用にあたっては、治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること。

2. 使用上の注意については、全社に共通している。

a. 慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)

高齢者(「(e. 高齢者への投与」の項参照)

b. 重要な基本的注意

1)本剤の使用にあたっては、患者の証(体質・症状)を考慮して投与すること。なお、経過を十分に観察し、症状・所見の改善が認められない場合には、継続投与を避けること。

2)本剤にはカンゾウが含まれているので、血清カリウム値や血圧値等に十分留意し、異常が認められた場合には投与を中止すること。

3)他の漢方製剤等を併用する場合は、含有生薬の重複に注意すること。

c. 相互作用

併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等

臨床症状・処置方法

機序・危険因子

?カンゾウ含有製剤

?グリチルリチン酸及びその塩類を含有する製剤

?ループ系利尿剤

 フロセミド

 エタクリン酸

?チアジド系利尿剤

 トリクロルメチアジド

偽アルドステロン症があらわれやすくなる。また、低カリウム血症の結果として、ミオパシーがあらわれやすくなる。(「重大な副作用」の項参照)

グリチルリチン酸及び利尿剤、尿細管でのカリウム排泄促進作用があるため、血清カリウム値の低下が促進されることが考えられる。

d. 副作用

本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していないため発現頻度は不明である。

1)重大な副作用

?偽アルドステロン症:低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定など)を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと。

?うっ血性心不全、心室細動、心室頻拍(Torsades de Pointesを含む):うっ血性心不全、心室細動、心室頻拍(Torsades de Pointesを含む)があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定など)を十分に行い、動悸、息切れ、倦怠感、めまい、失神等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

?ミオパシー:低カリウム血症の結果としてミオパシーがあらわれることがある。また、脱力感、筋力低下、筋肉痛、四肢痙攣・麻痺等の横紋筋融解症の症状があらわれることがあるので、CK(CPK)上昇、血中及び尿中のミオグロビン上昇が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと。

2)その他の副作用

過敏症;発疹、発赤、掻痒等があらわれることがあるので、このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。

e. 高齢者への投与

一般に高齢者では生理機能が低下しているので減量するなど注意すること。

f. 妊婦、産婦、授乳婦等への投与

妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること。

g. 小児等への投与

小児等に対する安全性は確立していない[使用経験が少ない。]