透析百科 [保管庫]

17.3  透析中の筋肉の痙攣

下肢の筋肉に生じることが多い。筋肉の痙攣の際には極めて強い疼痛が出現し、患者の苦痛を取り除くために、直ちに処置をおこなう必要がある。

透析中の筋肉の痙攣の主な原因は局所の血流不良であるが、低カルシウム透析液の使用中に血清カルシウム濃度が低下したために生じることもある。L-カルニチン欠乏が透析中の筋肉痙攣の発生に関与しているとの報告もある[1]。

 筋肉の血流不足は、除水過剰あるいは除水速度が高すぎる場合に生じる。治療法には、局所の痙攣している筋肉の伸展、温湿布、補液などがある。痙攣している筋肉の伸展は、痙攣が収まるまでの患者の苦痛が強く、ときに筋肉の断裂や骨折の生じることがある。局所の温湿布は、効果が薄く患者の苦痛も長く続く。したがって、透析中の筋肉の痙攣に対しては、200ml程度の緊急補液が現実的であろう。

その後、時間あたりの除水量を多くしなくてすむように、日常生活の中で水分・塩分の摂取量を減らすよう指導する。もし、それでも筋肉の痙攣が多発するようなら、ドライウェイトの見直しをおこなう。

低カルシウム透析液を使用中に筋肉の痙攣が多発するようなら、カルシウム濃度のより高い透析液に変更する。

また、透析前における芍薬甘草湯の投与も透析中の筋肉痙攣を防ぐのに有効である。

 

 

 

文献

1.      Sakurauchi Y, et al.: Effects of L-carnitine supplementation on muscular symptoms in hemodialyzed patients. Am J Kidney Dis. 32: 258-264.

 


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