27.5 葛根湯(カッコントウ)
組成・剤形・1日用量(メーカーにより規格が異なる)
カッコン、マオウ、ケイヒ、シャクヤク、タイソウ、ショウキョウ、カンゾウより抽出したエキスを製剤化
細粒剤(6.0〜7.5g/日)、顆粒剤(6.0〜7.5g/日)、錠剤(15〜18錠/日)
1. 葛根湯はしばしば感冒に対して投与される。葛根湯の具体的な適応は、メーカーによって異なる。以下に、小太郎漢方製薬株式会社、三和生薬株式会社、株式会社ツムラおよびその他のメーカーの示している葛根湯の適応をまとめる。
小太郎:頭痛、発熱、悪寒がして、自然発汗がなく、項(うなじ)、肩、背などが凝るもの、あるいは下痢するもの。感冒、鼻かぜ、蓄膿症、扁桃腺炎、結膜炎、乳腺炎、湿疹、蕁麻疹、肩こり、神経痛、偏頭痛。
三和:比較的体力があって頭痛、発熱、悪寒がして自然の発汗がなく肩や背などが凝るものの次の諸症(感冒、鼻かぜ、扁桃炎、中耳炎、蓄膿症、結膜炎、乳腺炎、肩こり、腕神経痛)
ツムラ:自然発汗がなく頭痛、発熱、悪寒、肩こり等を伴う比較的体力のあるものの次の諸症〔感冒、鼻かぜ、熱性疾患の初期、炎症性疾患(結膜炎、角膜炎、中耳炎,扁桃炎、乳腺炎、リンパ節炎)、肩こり、上半身の神経痛、じんま疹〕
その他:感冒、鼻かぜ、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛み
2. 使用上の注意については、全社に共通している。
〔使用上の注意〕
(1)慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
1)病後の衰弱期、著しく体力の衰えている患者[副作用があらわれやすくなり、その症状が増強されるおそれがある。]
2)著しく胃腸の虚弱な患者[食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐等があらわれることがある。]
3)食欲不振、悪心、嘔吐のある患者[これらの症状が悪化するおそれがある。]
4)発汗傾向の著しい患者[発汗過多、全身脱力感等があらわれることがある。]
5)狭心症、心筋梗塞等の循環器系の障害のある患者、又はその既往歴のある患者
6)重症高血圧症の患者
7)高度の腎障害のある患者(透析患者では、すでに腎機能が廃絶しており、通常、さらなる腎機能障害の進行はありえない)
8)排尿障害のある患者(透析患者には、この問題は生じない)
9)甲状腺機能亢進症の患者
[5)〜9)]:これらの疾患及び症状が悪化するおそれがある。]
(2)重要な基本的注意
1)本剤の使用にあたっては、患者の証(体質・症状)を考慮して投与すること。なお、経過を十分に観察し、症状・所見の改善が認められない場合には、継続投与を避けること。
2)本剤にはカンゾウが含まれているので、血清カリウム値や血圧値等に十分留意し、異常が認められた場合には投与を中止すること(ただし、透析患者にも低カリウム血症が出現するか否か、検討した報告はない)。
3)他の漢方製剤等を併用する場合は、含有生薬の重複に注意すること。
(3)相互作用
併用注意(併用に注意すること)
薬剤名等 |
臨床症状・措置方法 |
機序・危険因子 |
?マオウ含有製剤 ?エフェドリン類含有製剤 ?モノアミン酸化酵素 (MAO)阻害剤 ?甲状腺製剤 チロキシン リオチロニン ?カテコールアミン製剤 エピネフリン イソプレナリン ?キサンチン系製剤 テオフィリン ジプロフィリン |
不眠、発汗過多、頻脈、動悸、全身脱力感、精神興奮等があらわれやすくなるので、減量するなど慎重に投与すること。 |
交感神経刺激作用が増強されることが考えられる。 |
?カンゾウ含有製剤 ?グリチルリチン酸及びその塩類を含有する製剤 |
偽アルドステロン症があらわれやすくなる。また、低カリウム血症の結果として、ミオパシーがあらわれやすくなる。(「重大な副作用」の項参照) |
グリチルリチン酸は、尿細管でのカリウム排泄促進作用があるため、血清カリウム値の低下が促進されることが考えられる。 |
(4)副作用
本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していないため、発現頻度は不明である。
1)重大な副作用
a. 偽アルドステロン症:低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定等)を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと(ただし、透析患者にも低カリウム血症が出現するか否か、検討した報告はない)。
b. ミオパシー:低カリウム血症の結果としてミオパシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙攣・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと(ただし、透析患者にもこの症状が出現するか否か、検討した報告はない)。
c. 肝機能障害、黄疸:AST(GOT)、ALT(GPT)、アルカリホスファターゼ(ALP)、γ-GTPの上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
2)その他の副作用
a. 過敏症:発疹、発赤、掻痒等があらわれることがあるので、このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。
b. 自律神経系:不眠、発汗過多、頻脈、動悸、全身脱力感、精神興奮等があらわれることがある。
c. 消化器:食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐等があらわれることがある。
d. 泌尿器:排尿障害等があらわれることがある。
e. 高齢者への投与
一般に高齢者では生理機能が低下しているので減量するなど注意すること。
f. 妊婦、産婦、授乳婦等への投与
妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること。
g. 小児等への投与
小児等に対する安全性は確立していない。[使用経験が少ない。]
h. その他の注意
湿疹、皮膚炎等が悪化することがある。