透析百科 [保管庫]

27.6  小柴胡湯(ショウサイコトウ)

組成・剤形・1日用量(メーカーによりブシの規格が異なる)

サイコ、ハンゲ、ショウキョウ、オウゴン、タイソウ、ニンジン、カンゾウより抽出したエキスを製剤化

細粒剤(6.0〜7.5g/日)、顆粒剤(6.0〜7.5g/日)、錠剤(18錠/日)

 

 小柴胡湯が有効な症状と疾患

1. 感冒

小柴胡湯は、感冒が遷延した時期に用いられる。すなわち、発病後5,6日して急性期を過ぎたのに熱が上下したり微熱が続いたりして、口が苦くて食欲不振や倦怠感があり、咳や痰のといった気管支炎症状、胸部・季肋部・心窩部の重苦しい不快感・膨満感(胸脇苦満)があるときに用いられる。

加地らは、発病後5日間以上経過した感冒患者のうち咳を有し、口中不快(口の苦味・口の粘り・味覚の変化)・食欲不振・倦怠感のいずれかを伴う患者を対象にplaceboを対照とした二重盲検比較試験を実施した[1]。投薬期間は1週間、総症例数は331例、有効性採用症例250例、安全性採用症例268例、有用性採用症例217例であった。その結果、全般改善度において実薬群はplacebo群に比較して有意に優れていた(Wilcoxon p=0.001)。症状別改善度は、呼吸器症状の「痰の切れ」、消化器症状の「食欲」、全身症状の「関節痛・筋肉痛」で、実薬群はplacebo群に比較して有意に優れていた。なお、終了時の「改善」以上の率は、すべての症状において実薬群がplacebo群より高値であった。小柴胡湯を感冒が遷延した時期に使用する際、体力の程度や胸脇苦満等をあまり考慮しなくとも、漢方医学的に不適当と考えられる患者(著しく体力の衰えている患者、極度の寒がりないしは冷え性の患者、極度の不消化の下痢を呈する患者)を除外することで、感冒に対する効果を期待できることが示唆されたと述べている。安全性では、概括安全度において実薬群とplacebo群に有意な差は認められず、副作用発現率は、実薬群7.4%(10例)、placebo群11.4%(15例)で、両群とも重篤な副作用は認められなかった。有用度において、実薬群はplacebo群に比較して有意に優れていた(Wilcoxon p<0.001)。

2. 肝機能障害

小柴胡湯は二重盲検試験にて慢性肝炎患者GPTを有意に下げることが確認されている[2]。また、インターフェロン(IFN)治療終了後のC型慢性肝炎患者49例での非ランダム化比較試験で、50ヵ月間の小柴胡湯投与により、コントロール群に比較してATL(GPT)等の有意な低下が認められた(t-test p<0.01)。このことから、小柴胡湯が肝逸脱酵素を低下させることによって、肝炎から肝硬変への進展を遅延させる可能性が示唆されている[3]。

なお、C型慢性肝炎の小柴胡湯投与例では極めて稀に(1,000人に1人以下の確率)間質性肺炎を起こす例が報告されており、特にインターフェロンとの併用は厳重に禁じられている。詳しくは、使用上の注意〔警告〕〔禁忌〕を参照のこと。

 

参考

1.    小柴胡湯については、メーカーにより適応が異なる。以下に、小太郎漢方製薬株式会社、三和生薬株式会社、株式会社ツムラおよびその他のメーカーの示している小柴胡湯の適応をまとめる。

小太郎漢方:

?     胸や脇腹が重苦しく、疲れやすくて微熱があったり熱感と寒感が交互にあったりして、食欲少なく、時に舌苔があり、悪心、嘔吐、咳嗽を伴うなどの症状があるもの。感冒、気管支炎、気管支喘息、肋膜炎、胃腸病、胸部疾患、腎臓病、貧血症、腺病質。

?     慢性肝炎における肝機能障害の改善。

三和:

?     微熱があって頭痛、頭重、疲労倦怠感を自覚するもの、また熱感や微熱がとれず、あるいは熱と悪寒が交互に現れ、せきを伴うもののつぎの諸症:感冒、気管支炎、気管支喘息、麻疹

?     胸や脇腹に圧迫感を自覚し、悪心や嘔吐、腹痛などを伴い、舌に白苔があって、胃部が重苦しく食欲が減退するものの次の諸症:腎臓疾患、胃腸病、悪阻

?     腺病体質で疲れやすく抵抗力が乏しく、体力の回復がながびくものの次の諸症:腺病質の体質改善

?     慢性肝炎における肝機能障害の改善

ツムラ:

?     体力中等度で上腹部がはって苦しく、舌苔を生じ、口中不快、食欲不振、ときにより微熱、悪心などのあるものの次の諸症:諸種の急性熱性病、肺炎、気管支炎、感冒、胸膜炎・肺結核などの結核性諸疾患の補助療法、リンパ節炎、慢性胃腸障害、産後回復不全

?     慢性肝炎における肝機能障害の改善

その他:

?     吐き気、食欲不振、胃炎、胃腸虚弱、疲労感及びかぜの後期の症状

?     慢性肝炎における肝機能障害の改善

2. 使用上の注意については、全社に共通している。

〔警 告〕

1.本剤の投与により、間質性肺炎が起こり、早期に適切な処置を行わない場合、死亡等の重篤な転帰に至ることがあるので、患者の状態を十分観察し、発熱、咳嗽、呼吸困難、肺音の異常(捻髪音)、胸部X線異常等があらわれた場合には、ただちに本剤の投与を中止すること。

2.発熱、咳嗽、呼吸困難等があらわれた場合には、本剤の服用を中止し、ただちに連絡するよう患者に対し注意を行うこと。(「重大な副作用」の項参照)

 

〔禁 忌(次の患者には投与しないこと)〕

1.インターフェロン製剤を投与中の患者(「相互作用」の項参照)

2.肝硬変、肝癌の患者[間質性肺炎が起こり、死亡等の重篤な転帰に至ることがある。]

3.慢性肝炎における肝機能障害で血小板数が10万/?以下の患者[肝硬変が疑われる。]

 

〔使用上の注意〕

(1)慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)

1)著しく体力の衰えている患者[副作用があらわれやすくなり、その症状が増強されるおそれがある。]

2)慢性肝炎における肝機能障害で血小板数が15万/?3以下の患者[肝硬変に移行している可能性がある。]

 

(2)重要な基本的注意

1)慢性肝炎における肝機能障害で本剤を投与中は、血小板数の変化に注意し、血小板数の減少が認められた場合には、投与を中止すること。

2)本剤の使用にあたっては、患者の証(体質・症状)を考慮して投与すること。なお、経過を十分に観察し、症状・所見の改善が認められない場合には、継続投与を避けること。

3)本剤にはカンゾウが含まれているので、血清カリウム値や血圧値等に十分留意し、異常が認められた場合には投与を中止すること。

4)他の漢方製剤等を併用する場合は、含有生薬の重複に注意すること。

 

(3)相互作用

1)併用禁忌(併用しないこと)

薬剤名等

臨床症状・措置方法

機序・危険因子

インターフェロン製剤

・インターフェロン−α

・インターフェロン−β

間質性肺炎があらわれることがある。(「重大な副作用」の項参照)

機序は不明

 

2)併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等

臨床症状・措置方法

機序・危険因子

?カンゾウ含有製剤

?グリチルリチン酸及びその塩類を含有する製剤

?ループ系利尿剤

 フロセミド

 エタクリン酸

?チアジド系利尿剤

 トリクロルメチアジド

偽アルドステロン症があらわれやすくなる。また、低カリウム血症の結果として、ミオパシーがあらわれやすくなる。(「重大な副作用」の項参照)

グリチルリチン酸及び利尿剤は、尿細管でのカリウム排泄促進作用があるため、血清カリウム値の低下が促進されることが考えられる。

 

(4)副作用

本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していないため、発現頻度は不明である。

 

1)重大な副作用

?間質性肺炎:発熱、咳嗽、呼吸困難、肺音の異常(捻髪音)等があらわれた場合には、本剤の投与を中止し、速やかに胸部X線等の検査を実施するとともに副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。また、発熱、咳嗽、呼吸困難等があらわれた場合には、本剤の服用を中止し、ただちに連絡するよう患者に対し注意を行うこと。

?偽アルドステロン症:低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定等)を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと(ただし、透析患者にも低カリウム血症が出現するか否か、検討した報告はない)。

?ミオパシー:低カリウム血症の結果として、ミオパシー、横紋筋融解症があらわれることがあるので、脱力感、筋力低下、筋肉痛、四肢痙攣・麻痺、CK(CPK)上昇、血中及び尿中のミオグロビン上昇が認められた場合には投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行うこと(ただし、透析患者にもこの症状が出現するか否か、検討した報告はない)。

? 肝機能障害、黄疸:AST(GOT)、ALT(GPT)、Al-P、γ-GTPの著しい上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

 

2)その他の副作用

?過敏症:発疹、そう痒、蕁麻疹等があらわれることがあるので、このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。

?消化器:食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹痛、下痢、便秘等があらわれることがある。

? 泌尿器:頻尿、排尿痛、血尿、残尿感、膀胱炎等があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。

 

(5)高齢者への投与

一般に高齢者では生理機能が低下しているので減量するなど注意すること。

 

(6)妊婦、産婦、授乳婦等への投与

妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること。

 

(7)小児等への投与

小児等に対する安全性は確立していない。[使用経験が少ない。]

 

1. 加地正郎、柏木征三郎、山木戸道郎、他:TJ-9ツムラ小柴胡湯の感冒に対するPlacebo対照二重盲検群間比較試験. 臨牀と研究 78(12): 2252-2268, 2001.

2. 平山千里、奥村恂、谷川久一、他:多施設慢性活動性肝炎に対する小柴胡湯の臨床効果. 臨床と研究 76: 176-184, 1999.

3. 中島修、曽根美好、黒川香他:小柴胡湯によるC型慢性肝炎から肝硬変への進展抑制.肝胆膵 20: 751-759, 1990