24.7 透析中におこなう栄養補給のための輸液
高度栄養障害はあるが中心静脈栄養を行うほどではない場合や、何らかの理由で中心静脈栄養が施行でない場合には、透析中にダイアライザーの下流の血液回路から栄養補給のための輸液を行うことになる。栄養補給のための血液回路への輸液は、2時間以上かけて透析の後半に行う。低栄養が長く続いている患者では、輸液の終了後しばらくして低血糖の出現することがある。 最終的な輸液製剤は以下の要素を混合して作成する。 (1) 5%ブドウ糖液250 ml と50%ブドウ糖液60 mlの混合液(ただし、外シャントの患者では、シャント血流量が少ないため、5%ブドウ糖液250 ml に50%ブドウ糖液20 mlを加えたものを処方する)。糖尿病のある患者では、血糖値をモニターしつつ、慎重に投与する。 (2) 窒素源として、200 mlの腎不全用アミノ酸製剤(薬)。ただし、重症肝不全を合併している患者では、腎不全用アミノ酸製剤の投与により肝性昏睡に陥るおそれがある。このような患者では、代わりに肝不全用アミノ酸製剤を投与する。 (3)必須脂肪酸の不足を補うため、100 mlの10%脂肪製剤(薬)。経口的に肉や魚をまったく摂取しておらず、また著しく栄養状態の悪い患者では、骨格筋および心筋内のL-カルニチンが極端に不足しており、そのために脂肪酸の利用ができないことがある。このような患者では、心筋内への脂肪酸の蓄積による不整脈の出現を防ぐため、透析開始 2〜3 時間前に 500 mg 程度のL-カルニチンを経口的に摂取させるのが望ましい(L-カルニチンが吸収されるのに2時間30分ないし3時間かかる(血中濃度が最大になるのは5時間後である);なお、 L-カルニチンは保険に収載されていない)。 (4) 5 mlの高カロリー輸液用ビタミン剤(薬)。医療保険で認められている高カロリー輸液用ビタミン剤の投与期間は3週間以内である。 (5) 透析前血清カリウム濃度が3 mEq/L以下と低い場合には、適当な量の1モル塩化カリウム液を投与する。
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