21.9 血清カリウム濃度(K)
透析前血清K濃度の標準値を3.5〜5.5 mEq/Lとし、6.0 mEq/L以上を危険領域とする。平均的な人では、生体内の総K量の約80%は筋肉細胞内にある。このように、筋肉細胞は大きなK貯蔵能を有している。したがって、筋肉は血清K濃度の変動を緩衝する役割を果たす。これは、同じ量のKを摂取しても筋肉量の大小によって血清K濃度の上昇程度が異なることを意味している。すなわち、たとえ同じ量のKを摂取しても、筋肉量の少ない患者では血清K濃度がより大きく上昇する。そこで、筋肉量が少ない高齢者や全身衰弱の著しい患者は高K血症をきたしやすい。
クレアチニン産生速度は筋肉量を反映する。したがって、クレアチニン産生速度が小さな患者は高K血症をきたしやすい。ここで、日本透析医学会統計調査委員会報告にある「%クレアチニン産生速度」と「クレアチニン産生速度」とは異なることに気を付けなければならない。%クレアチニン産生速度とは、対象としている患者と同性、同年齢の非糖尿病の透析患者における平均クレアチニン産生速度に対する、対象としている患者のクレアチニン産生速度の百分率である。クレアチニン産生速度(CGR)は、%クレアチニン産生速度(%CGR)と年齢(Y:歳)から以下の式により算出される。
男性:CGR = %CGR×(23.35−0.15 Y)/100
女性:CGR = %CGR×(19.39−0.12 Y)/100
CGRが低いほど高K血症をきたしやすく、とくにCGRが10mg/kg/day以下では血清K濃度が上昇しやすい。高K血症の原因は、別の項で述べる。