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20.4  持続血液濾過法(CHF)と持続血液透析濾過法(CHDF)

1. 持続血液濾過法(CHF)と持続血液透析濾過法(CHDF)の原理

CHFとCHDFは、それぞれ、長時間、持続的に緩徐に施行する血液濾過法(HF)と血液透析濾過法(HDF)である。これらの治療をまとめて持続的腎代替療法 (continuous renal replacement therapy;CRRT)と呼ぶこともある。CHFとCHDFは、救急・集中治療領域で多臓器不全(MOF)の一症候として発症する急性腎不全、熱傷後の急性腎不全、心疾患および循環器系合併症を有する患者における急性腎不全に対して施行される。

これらの病態の急性腎不全を合併している患者にCHFとCHDFが施行されるのは、これらの患者では通常、循環動態が不安定であるため、短時間に急速に除水や溶質除去を行うことが困難であるからである。すなわち、このような患者における血液浄化は、(1) 持続的であり、(2) 緩徐であり、かつ、(3) 体外循環血液量が極めて少なくなくてはならない。

 

 

2. 持続血液濾過法(CHF)と持続血液透析濾過法(CHDF)の実際

a. 装置
各種ポンプおよびモニタリング装置等が一体として組み込まれた専用のCHF・CHDF装置が開発されている(ウベJuN-600/東レTR‐530、クラレKM‐8900、KM‐8700など)。

b. ヘモフィルター
CHFやCHDFには、膜面積が0.25〜1.0 m2で容量が小さいヘモフィルターが使用される。ヘモフィルター膜の素材には、PAN(polyacrylonitrile)膜PMMA(polymethylmethacrylate)膜PS(polysulfone)膜などがある。

c. 血液回路
それぞれのCHF・CHDF専用装置に専用の血液回路が使用される。

d. ブラッドアクセス
大腿静脈、右内径静脈あるいは鎖骨下静脈にdouble lumen catheterを留置する。内シャントでは、CHFやCHDFが2〜3日間に及ぶと、穿刺部から血液が漏れ出ることがある。

e. 抗凝固剤
抗凝固剤としては、ヘパリン、低分子量ヘパリンあるいはメシル酸ナファモスタット(フサン)が用いられるが、術後における急性腎不全やMOFの一部としての急性腎不全に対してCHFやCHDFを施行する場合には、メシル酸ナファモスタットが第一選択となる。

メシル酸ナファモスタットは、CHFやCHDFの開始時に 20mg を投与し、その後は、20 〜 30 mg/hr で持続的に投与する。

なお、大竹らは、CHF・CHDF 施行後の出血の頻度は、ヘパリンで 67%、フラグミン(低分子量ヘパリン)で 29%、フサン(メシル酸ナファモスタット)では 4% であったと報告している[1]。

f. 補充液と透析液
CHFやCHDFでは、補充液として一般的に重炭酸のサプラッド B が使用される。CHDF では、さらに透析液として、通常の血液透析用の重炭酸透析液を用いることもある。しかし、重炭酸透析液には少量のアセテートが含まれており、これが体内に蓄積することもあるため、最近は透析液としても重炭酸のサプラッド B が用いられる。

g. 治療条件
CHF やCHDF では、血液流量を 60 〜 100 m1/min 、補液流量を 5.0 ml/min(300 m1/hr)程度に設定する。CHDF では、さらに透析液流量を 8.3ml/min(500m1/hr) 程度に設定する。また、CHF と CHDF のいずれにおいても、除水速度は 0 〜 600 ml/hr の範囲内で患者の状態により決定する。

 

 

3. 全身性炎症反応症候群(SIRS)に対する大量の限外濾過量の持続血液濾過法(high-volume HF;HVHF

a. 全身性炎症反応症候群(sytemic inflammatory response syndrome;SIRS)[2]
感染、外傷、熱傷、膵炎、外科手術など、細胞や組織を損傷する刺激が生じると、体内ではサイトカインが生成される。このようにして生成されたサイトカインは、免疫・炎症反応を介して非特異的な全身生体反応を発生させる。この臨床概念がSIRSである。SIRSが重症化、遷延化すると、mediator stormにより全身の血管の透過性が亢進し、間質の浮腫と循環血液量の減少が生じ、またサイトカインによる直接障害が生じて、多臓器の機能が不全に陥る。

b. 大量の限外濾過量の持続血液濾過法(high-volume HF;HVHF)
最近、全身性炎症反応症候群に対して、分子量が 8000 〜 30000 dalton のサイトカインの除去を目的として、極めて大量の限外濾過量の持続血液濾過(high-volume HF;HVHF)[3]が施行されるようになった。

急性腎不全患者に対して、high-volume HFを施行すると生存率が改善すると報告されている。しかし、high-volume HF は、持続的ではあっても、緩徐ではない。循環動態が不安定であるが故、すべての重症患者にこれを適用することは困難であろう。大量の限外濾過だけでなく、ヘモフィルター膜への吸着によってもサイトカインを除去すべく、サイトカインを吸着する PMMA 膜の使用が推奨されている[4]。

 

 

 

1. 大竹喜雄、他: Continuous hemodiafiltration(CHDF)を用いた重症患者管理. 透析会 24: 1149-1154, 1991.

2.  Members of the American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine Consensus Conference Committee: Definitions for sepsis and organ failure and guidelines for the use of innovative therapies in sepsis. Chest 101: 1644-1655, 1992.

3.  片山 浩、他:集中治療に役立つ血液浄化の最先端:HF, HV-CHDFに対する期待と展望. 日臨床会誌 27: 28-33, 2007.

4.  Hirasawa H, et. al.: Endotoxin adsorption or hemodiafiltration in the treatment of multiple organ failure. Curr Opin Crit Care 6: 421-425, 2000.


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