透析百科 [保管庫]

9.8  透析低血圧の要因とその対策:末梢血管抵抗の上昇を阻害する要因

1.自律神経失調

糖尿病の患者や高齢者には、中等度以上の自律神経失調の認められることが多い。このような患者では、心拍出量の減少による血圧の低下を交感神経緊張度の増大により防ぐことができず、除水が進行するとともに、血圧が徐々に低下していく。これに対しては、透析開始前に塩酸ミドドリンメチル硫酸アメジニウム10mgあるいはドロキシドパ200 mg などの昇圧薬を投与する。昇圧薬は細動脈壁の緊張度を上昇させることにより末梢血管抵抗を増大させる。

なお、ドロキシドパはメチル硫酸アメジニウムよりも作用時間が長く、透析後の起立性低血圧や活力の低下に対しても効果が認められる。

 

 

2.高い透析液温

体温が上昇すると、皮膚の細動脈壁の緊張度が低下し、皮膚の末梢血管抵抗が減少、皮膚血流量が増大する。透析中に体温が上昇する要因の中には、高すぎる透析液温がある。高すぎる透析液温は、このように皮膚の末梢血管抵抗を減少させることにより、透析中の血圧を低下させる。

血液濾過(HF)やECUMで血圧低下が少ない理由はまだ明らかではない。しかし、HFでは体内に戻る血液の温度が透析におけるよりも低く、これがこの治療モードで血圧低下が少ない理由であるとの報告がある[1]。

 

 

3. 降圧薬の使用

多くの降圧薬(カルシウム拮抗薬α遮断剤など)は、細動脈壁の緊張度を低下させることにより血圧を下降させる。透析前にこのような降圧薬を服用すると、細動脈壁の緊張度の上昇が抑制されるため透析低血圧が生じやすくなる。

 

 

4.動脈硬化

動脈硬化が存在すると、交感神経の緊張度の亢進に対する細動脈の反応が鈍くなる。すなわち、交感神経緊張度の同程度の亢進に対して、末梢血管抵抗の増大の程度が少ない。そのため、動脈硬化の著しい患者では透析低血圧が発生しやすい。

 

 

5.酢酸(アセテート)透析液の使用

酢酸は細動脈壁の緊張を低下させることが知られている。したがって、酢酸透析液の使用は透析低血圧の誘因となる。現在は、ほとんどの場合、重曹(バイカーボネート)透析液が使用されているので以前ほど、透析低血圧は多くないが、重曹透析液に含まれるわずかの酢酸(8 mEq/L程度)が問題であるとの報告もある。

 

 

 

文献

1. Maggiore Q, Pizzarelli F, Sisca S, et al.: Blood temperature and vascular stability during hemodialysis and hemofiltration. Trans Am Soc Artif Intern Organs 28: 523-527, 1982.

 

塩酸ミドドリン
 
 メトリジン錠2mg
    (大正製薬)         
 アバルナート錠2mg
    (東和薬品)

 メトドリン錠2mg
    (メディサ新薬)

ナチルジン錠2mg
    (大洋薬品)

 

メチル硫酸アメジニウム

 リズミック錠10mg
     (大日本製薬)

 ダイアリード錠10mg
     (扶桑薬品)

 オフビット錠10mg
     (大正製薬)


ドロキシドパ
      
    ドプス Dops
    カプセル:100・200mg
    細粒:20%
     (住友)