28.5 透析液清浄化の臨床効果
(この項は熊本中央病院の福井博義先生の執筆による) 透析液清浄化の臨床効果として、(1) 手根管症候群の発生頻度の減少、(2) 血清β2-ミクログロブリン濃度の低下、(3) 血清CRP値の低下、(4) 血清アルブミン値の上昇、(5) 貧血の改善などが報告されている。 1. 透析液清浄化の臨床効果に関する報告例
1)
透析液の浄化による手根管症候群の発生頻度の減少 さらに、松下らも47名の透析患者を対象にした研究で同様の結果を得ている。ただし、彼らの研究では、同時に透析液の清浄化によっても骨嚢胞の進行を止めることはできないことが示された[2]。 2) 透析液の浄化による血清β2-ミクログロブリン濃度の低下 従来の膜では膜表面の細孔のサイズが小さいため、たとえ清浄化されていない透析液を使用しても、体内に流入するエンドトキシン量はわずかであると考えられる。しかし、ハイパフォーマンス膜では膜表面の細孔のサイズが大きいため、清浄化されていない透析液を使用するとより多くの量のエンドトキシンが体内に流入するはずである。したがって、血液側へのエンドトキシン流入量が多かった浄化されていない透析液にハイパフォーマンス膜を使用していた患者では、透析液を清浄化するとエンドトキシンの体内流入量が減ることになる。そこで、政金のこの研究結果は、透析液の浄化により血液側へのエンドトキシン流入量を減らすと、血清β2-ミクログロブリン濃度が低下することを示していると考えられる。 同様に、松岡らの研究でも透析液の清浄化後に血清β2-ミクログロブリン濃度が低下する知見が得られている[4]。 3) 透析液の清浄化による血清CRP値の低下 宍戸らも、透析液エンドトキシン濃度を40
EU/Lから検出感度以下にまで清浄化したところ、ハイパフォーマンス膜を使用している患者ではCRP値が0.19
mg/dlから0.15 mg/dlに有意に低下したと報告している[6]。 4) 血清アルブミン値の上昇
5) 透析液の清浄化による貧血の改善 6) 透析液の浄化のその他の臨床効果 7)
透析液清浄化の臨床効果に関する牛深市民病院の研究
文献 1. Baz M, et al.: Using ultrapure water in hemodialysis delays carpal tunnel syndrome. Int J Artif Organs, 14: 681-685, 1991. 2. 松下芳雄、他:慢性血液透析患者の透析アミロイドーシスによる骨病変の検討.透析会誌36(Suppl.1):1008, 2003. 3. 政金生人:ETフリー化を目指した透析液での臨床効果. 血液透析とエンドトキシン(竹沢真吾編): p49-61, 2002. 4. 松岡 潔、他:エンドトキシンフリー透析液で血清β2MGはどこまで低下したか. 腎と透析(別冊HDF療法 ’00). p50-55, 東京医学社、東京、2002. 5. Schiffl H, et al: Ultrapure dialysate reduces dose of recombinant human erythropoietin. Nephron 83: 278-279, 1999. 6. 宍戸寛治、他:透析液清浄化の長期効果. 腎と透析 別冊53(ハイパフォーマンスメンブレン’02): 16-20, 2002. 7. 松岡潔、他:当院での透析液清浄化におけるエリスロポエチン製剤(Epo)投与量の現状.透析会誌(抄録集)36(Suppl. 1):712, 2003. 8. 岡 良成、他:透析液の超清浄化によるMDA-LDL、Ox-LDL およびsCD-14の低減効果. 透析会誌 35: 269-273, 2002. 9. 有薗健二、他:透析液清浄化が高感度CRPおよび腎性貧血に及ぼす影響について.透析会誌(抄録集)36(Suppl. 1):712, 2003.
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