30.5 腎移植からの透析再導入
1. 腎移植から透析再導入までの期間 a.
移植腎の超短期の機能廃絶 b.
移植腎の早期の機能廃絶 このような症例は、血液透析に移行し、通常、残存している移植腎の機能は比較的短期間のうちに失われる。移植腎の腫脹、疼痛、発熱、血尿などの拒絶反応の兆候や全身状態をみながら免疫抑制薬を減量していく。 c.
移植腎の慢性期における機能廃絶 なお、原則として、機能が廃絶した移植腎は摘出せず、生体内に残したままで透析療法に移行する。移植腎を摘出するのは、免疫抑制薬の減量や中止により急性拒絶反応が生じた場合や、移植腎に膿瘍や悪性腫瘍が発生した場合など、特殊な場合にかぎる。免疫抑制薬を減量あるいは中止すると、残存する移植腎は生体に悪影響を与えることなく、しだいに萎縮していく。
2. 透析への再導入 一般の透析施設に転入してくる透析再導入患者は、ほとんどの場合、移植腎の機能が慢性期に廃絶した患者である。このような移植腎の機能が慢性期に廃絶した患者の透析再導入は、より早期の導入という点を除けば、通常の保存期腎不全患者の透析導入と同じスケジュールでおこなう。 通常、透析再導入の前に、すでに免疫抑制剤の減量が始まっているが、透析への再導入後にも、まず、腎排泄性の免疫抑制剤である代謝拮抗薬(ミコフェノール酸モフェチル(薬)、ミゾリビン(薬)、アザチオプリン(薬)など)を1週間程度をかけて減量あるいは中止する。透析導入にともなって腎機能がさらに低下するので、このとき、これらの薬剤を減量あるいは中止しておかなければ、血中濃度が上昇し、貧血、白血球減少、肝障害などの副作用が生じる危険がある。貧血に対しては、必要に応じて遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤(rHuEPO)を投与する。 代謝拮抗薬に続いて、3〜6ヶ月をかけてカルシニューリン阻害薬(タクロリムス、シクロスポリンなど)を減量あるいは中止する。さらに、ステロイド(メドロール(薬)、プレドニン(薬)など)もしだいに最小維持量にまで減量し、1年をめどに中止する。
3. 透析へ再導入した患者における注意点 a.
精神的な支援 b. 悪性腫瘍 腎移植患者では、腎不全状態や免疫抑制剤の長期服用のため、悪性腫瘍の発生率が高い。CEAやPSAなどの血中腫瘍マーカーのチェックに加えて、胃癌、大腸癌、子宮癌、乳癌、前立腺癌、乳癌など、様々な癌に関して定期的な検査が必要である。
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■タクロリムス タリムス (千寿) プロトピック (アステラス) プログラフ (アステラス) グラセプター (アステラス) ■シクロスポリン
■ミゾリビン ■アザチオプリン ■メドロール ■プレドニン |