4.11 高カリウム血症の原因
1. カリウム負荷量の増大
カリウムを多く含む食品の過剰摂取が高カリウム血症の原因としてもっとも多い。
透析百科の姉妹編である 透析ナビゲータ
では、各患者のカリウム摂取量を定期検査データを基に、新しい数式を用いて算出しいる。
2. 細胞内から細胞外へのカリウム流出量の増大による高カリウム血症
a.アシドーシス(とくに呼吸性アシドーシス)
b.カロリー摂取量の不足、発熱や感染症、消耗性疾患
c.血管内での溶血
d.消化管出血(消化管内に出た血球が破壊し、血球内のカリウムが遊離して吸収されるため)
e.インスリン欠乏状態
f.β2遮断剤の投与
3. 運動と交感神経緊張度増大の影響
透析患者では、採血直前に激しい運動をおこなうと、一時的に血清カリウム濃度が上昇することがある。さて、正常には、運動をおこなうと筋細胞膜上で持続的にスパイク電位が発生し、これにともなって筋肉内から細胞外液中へのカリウム流出量が増大する。しかし、同時に交感神経系の緊張度が増大し、これは細胞内へのカリウム移行を促進する。そこで、このふたつの因子が互いに打ち消し合う結果、運動をおこなっても細胞内から細胞外への差し引きのカリウム移行は生じない。ところが、透析患者ではときに交感神経系の緊張に対する筋細胞の反応が鈍化している。そこで透析患者では、激しい運動をおこなうと細胞内から細胞外へのカリウムの差し引きの流出が増大し、血清カリウム濃度が上昇することがある。この場合、しばらく安静にすると血清カリウム濃度は再び元の値に戻る。したがって、透析室に駆け込んだ直後に採血した検体では、血清カリウム濃度が上昇していることがある。
4. 偽性高カリウム血症
高カリウム血症のみられるときには、まず採血時の溶血による偽性高カリウム血症の可能性を除外しておかなければならない。細い針で強く吸引すると溶血が生じ,検体中のカリウム濃度が上昇する。このときにはしばしば血清LDH活性も上昇する。次に、採血後に血清分離せずに長い時間、放置しておくと血球からカリウムが遊離し、結果として検体のカリウム濃度が上昇する。とくに、夜間透析をおこなう患者において透析前に採血した血液を、血清分離せずに翌朝まで放置しておくと、検体中のカリウム濃度が0.5〜1.0mEq/L程度上昇する。
5.高カリウム血症の症状と治療