21.20 CEA
CEA は最もよく利用される腫瘍マーカーのひとつである。
1. CEAの測定法と測定値
CEAの基準値は使用した測定キットにより異なる(2.5〜10.0 ng/mlの範囲にある)。したがって、CEAの血清濃度を評価する場合には、使用した測定キットにおける基準値を確認する必要がある。
   
   
2. CEA が陽性となる悪性腫瘍
CEAの血清濃度は種々の悪性腫瘍で上昇する。CEAが陽性になる悪性腫瘍は、陽性率が高い順に、転移性肝臓癌、大腸癌、膵臓癌、肺癌(とくに腺癌)、胆道癌、胃癌などである。その他、甲状腺髄様癌、乳癌、腎癌、子宮癌、卵巣癌でもCEAが陽性になることがある。
| 悪性腫瘍の種類 | 陽性率 | 
| 大腸癌 | 62〜78% | 
| 胃癌 | 42〜75% | 
| 膵臓癌 | 65〜79% | 
| 肺癌 | 33〜58% | 
| 乳癌 | 23〜47% | 
| 卵巣癌 | 32〜42% | 
| 子宮頸癌 | 43〜47% | 
| 膀胱癌 | 30〜35% | 
  
  
3. CEAと癌の進行度
早期癌ではCEAの陽性率は低く、病期の進行とともに陽性率は上昇する。すなわち、CEAの血清濃度は、腫瘍の大きさ、深達度、転移の範囲に平行して上昇する。したがって、CEAの測定は癌の早期診断には適していない。血清CEA濃度の測定は癌の予後の推定、治療効果のモニターに利用する。
  
  
4. 血清CEA濃度を上昇させる悪性腫瘍以外の因子
CEAの血清濃度は、喫煙により喫煙量と平行して上昇する。しかし、CEAの血清濃度が喫煙のみにより健常者の上限濃度の2倍以上にまで上昇することは稀である。CEAの血清濃度を上昇させる可能性がある良性腫瘍に、肺炎、気管支炎、結核、潰瘍性大腸炎、慢性肝炎、慢性膵炎、胆石、糖尿病などがある。
  
  
5. 透析患者における血清CEA濃度の基準値
透析患者では、健常者よりもCEAの血清濃度が高値を示す。しかし、合併症を有していない透析患者の血清CEA濃度が健常者の基準値の2倍を越すことは稀である。もし透析患者の血清CEA濃度が健常者の基準値の2倍を越すようであれば、消化器系臓器を中心に悪性腫瘍の精査を行わなければならない[1,2]。
   
   
文献
1. 大平整爾, 他:慢性透析患者における各腫瘍マーカーの測定値の検討. 透析会誌 24: 475-483, 1991.
2. Odagiri E, et al: Effect of hemodialysis on the concentration of the seven tumor markers carcinoembryonic antigen, alfa-fetoprotein, squamous cell carcinoma-related antigen, neuron-specific enolase, CA 125, CA 19-9 and CA 15-3 in uremic patients. Am J Nephrol 11: 363-368, 1991.