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11.14 心房粗動

1.心房粗動における電気的興奮の伝播

心房細動は、高頻度の電気的興奮が心房内を不規則に伝播し、あるいは不規則に旋回することにより、不規則かつ無秩序な興奮が維持されて、心房が頻回(250/分〜350/分)かつ無秩序に収縮を繰り返す状態である。これに対し、心房粗動は、興奮性の増大した心筋細胞から伝達された興奮が一定の規則正しい周期で三尖弁輪を反時計方向(common type)あるいは時計方向(uncommon type)に旋回し、この興奮の旋回から伝播して来る電気的興奮によって、心房の心筋細胞がバラバラに、しかし比較的規則的に高頻度(250/分〜350/分)で興奮する状態である(図1)。

心房粗動では、このように、心房における心筋細胞の興奮はバラバラではあるが、しかし比較的規則的である。したがって、房室結節では電気的興奮は一定の比率でブロック(間引き)される。すなわち、心房からの電気的興奮は、2:1、3:1、4:1など、一定の比率で規則的に心室に伝えられ、したがって心房粗動における脈拍は規則的なリズムの頻脈となる。

心房粗動では、運動を行うと房室結節のブロックの比率が急に低下し、脈拍数が急に増加することがある。

 

 

2.心電図所見

心房粗動の心電図の特徴は、P波が消失してF波が出現し、かつ脈拍のリズムが通常、規則的であることである。すなわち、心房粗動の心電図ではP波を認めず、代わりに「のこぎり歯状」の規則的な 250/分 〜 350/分の心房電位の振れが出現する。これをF波という。?、?、aVF誘導において、それぞれのQRS波の起始部を結んだ線(基線)から上方にF波がある場合にはF波は上向きであるとし、この線より下方にF波がある場合にはF波は下向きであるとする。三尖弁輪を反時計方向に電気的興奮が旋回する通常型の心房粗動(common type)ではF波は下向きとなり、三尖弁輪を時計方向に電気的興奮が旋回する非通常型の心房粗動(uncommon type)ではF波は上向きとなる。

心房粗動でも、心房興奮の全てが心室に伝導するのではなく、心室に伝導するのはそのうちのいくつかにすぎない。2個のF波のうちの1つが心室に伝導する場合には、2:1房室伝導と呼び、3個のF波のうちの1つが心室に伝導する場合には3:1房室伝導、4個のF波のうちの1つが心室に伝導する場合には4:1房室伝導と呼ぶ。稀に、心房興奮が全て心室に伝導されることがあるが、この場合には高度な頻拍となり、血圧が低下して意識を失う(Adams-Stokes発作)。ときに、房室伝導のブロックの比率が変動し、脈拍が不規則となることがある。

2:1房室伝導の心房粗動では、心電図上で発作性上室性頻拍(PSVT)と誤ることがある。これは、QRS波とQRS波の間にあるF波をP波と間違えることによる。QRS波に隠れているF波を確認することにより、心房粗動の心電図であると診断できる。

 

 

3.心房粗動と心房細動

基礎疾患、治療法、再発の予防法あるいは予後について、心房粗動と心房細動に異なるところはない。心房細動と心房粗動が同じ患者に発生することもある。心房粗動の頻度は心房細動の約1/20とされている。