11.4 心不全と溢水
高齢の透析患者、透析歴の長い透析患者、糖尿病のある透析患者は、しばしば種々の程度の心不全を合併している。このような患者では、心臓の予備能が低下しているために、透析中の除水により肺うっ血が消失する前に、あるいは除水により心房性Na利尿ホルモン(hANP)の血漿濃度が通常の患者の基準値まで低下する前に、血圧が低下し始めることが多い。また、このような患者ではそれほど多くない体内水分貯留でも肺水腫を来す傾向がある。
中等度以上の心不全の患者では、血液透析により良好な状態を維持するのが困難なことが多い。すなわち、透析中の血圧低下を避けようとするなら未だ溢水の状態で透析を終了せざるを得ないことが多い。可能なら、このような患者ではCAPDへの移行を検討する。
ときにうっ血肝を合併する。