透析百科 [保管庫]

11.7  透析中に生じる急性の不整脈

透析中に心室性頻拍、心室性期外収縮、心房細動などの不整脈の生じることがある。これらの不整脈は、潜在的な心筋虚血がある場合に発生しやすく、とくに血圧が低下したとき多い。

 

心室性期外収縮、心房細動などの不整脈では、まず透析中の狭心症の治療に準じた薬物治療をおこなってみる。

 

すなわち、まず経鼻的酸素吸入を開始し、透析終了時まで続ける。次に、血圧が低下していれば血流を下げ、除水を停止するとともに200ml程度の生理食塩水を投与する。
 

この処置により血圧が上昇したら、直ちにニトログリセリンの舌下投与をおこなう。血圧が低下していない場合には、血流を下げ、除水を停止するとともにニトログリセリンの舌下投与をおこなう。それでもなお不整脈が改善しない場合には、200ml程度の生理食塩水を投与する。不整脈が消失したら、15 〜30分後に血流を元のレベルに戻し、除水を再開する。しかし、もし不整脈が消失せず、それにもかかわらず不整脈は深刻なものではないと判断したときには、30分後に血流を元のレベルに戻し、除水を再開し、注意深く血液透析を続ける。しばしば出現する心室性期外収縮に対しては、塩酸リドカイン(薬)を1〜2mg/分で持続注入することもある。

ただし、心室性頻拍など、不整脈が重篤であると判断した場合には、直ちに透析を中断し、ゆっくりと返血する。その後速やかに薬物療法や電気的除細動に関して専門医にコンサルテートする。薬物療法や電気的除細動の詳細については成書にゆずる。

 

 


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