18.8 C型肝炎ウィルスに対するインターフェロン療法
C型肝炎の根治療法は、ウィルスの抑制と排除を目的としたインターフェロンの投与である。しかし、現在一般的におこなわれているインターフェロンの6ヶ月間投与では、根治できるのが30〜40%であり、残りの60〜70%ではHCVウィルスが残存し、肝臓は炎症を繰り返しながら荒廃していく可能性を残す。インターフェロンの効果に影響する因子は、感染しているC型肝炎ウィルス(HCV)のgenotypeと血中のHCV量である。HCVのgenotypeの中、genotype1bはインターフェロン療法に抵抗する傾向が強い。なお、インターフェロンの種類には、天然型インターフェロンα(薬)、遺伝子組み替え型インターフェロンα(薬)、天然型インターフェロンβ(薬)がある。
インターフェロンの有効性とgenotype および RNA量 |
1.HCV-RNAがgenotype2aあるいはgenotype2bで、かつbDNAプローブ法でHCV-RNA量が常に0.5Meq/ml未満の場合インターフェロンαの8週間連日投与により90%弱の症例で充分な効果が得られる[1]。
2.HCV-RNAがgenotype2aあるいはgenotype2bで、かつbDNAプローブ法でHCV-RNA量がときどき0.5Meq/mlを越える場合インターフェロンαの8週間連日投与による著効率は約50%であり、一方8週間連日投与プラス16週間週3回投与とすれば著効率は70%強となる[1]。
3.HCV-RNAがgenotype2aあるいはgenotype2bで、かつbDNAプローブ法でHCV-RNA量が1.0Meq/ml以上の場合インターフェロンαを8週間連日投与した後、16週間週3回投与する。天然型のインターフェロンαで75%の著効率、遺伝子組み替え型のインターフェロンαで68%の著効率が得られる[1]。
4.HCV-RNAがgenotype1bで、かつbDNAプローブ法でHCV-RNA量が1.0Meq/ml未満の場合インターフェロンαを8週間連日投与した後、16週間週3回投与する。約50%の著効率が得られる[1]。
5.HCV-RNAがgenotype1bで、かつbDNAプローブ法でHCV-RNA量が1.0Meq/ml以上の場合インターフェロンαを8週間連日投与した後、16週間週3回投与する。9%前後の著効率しか得られない。HCV-RNA量が10Meq/ml以上の場合には、ウィルスの排除は極めて困難である。このような例では、肝炎の鎮静化を目的とした治療をおこなう[1]。
上記のように、インターフェロンの6ヶ月投与を行う場合、初期の連日投与期間を2週間とする場合と8週間とする場合がある。HCV-RNAがgenotype2aあるいはgenotype2bで、かつbDNAプローブ法でHCV-RNA量が1.0Meq/ml以上の場合における比較研究では、8週間連日投与した後、16週間週3回投与する方が2週間連日投与した後、22週間週3回投与するよりも著効率が高かったと報告されている[1]。
その他の場合でも、8週間連日投与した後16週間週3回投与する方が、2週間連日投与した後22週間週3回投与するよりも著効率が高かい可能性がある。問題になるほどの副作用がないのなら、8週間連日投与した後16週間週3回投与する方法を採用する方がよいだろう。
具体的には腎機能が正常な人については、(1)600〜1,000万IUのインターフェロンαを2週間連日筋注した後、さらに22週間週3回同量を筋注するか、(2)同量のインターフェロンαを8週間連日筋注した後、さらに16週間週3回筋注する。一方、インターフェロンβなら300〜600万IUを6週間ないし8週間連日静注する。
しかし、透析患者ではインターフェロンの体内での半減期が非透析時には約2倍に延長しており[2,3]、一方、透析時には透析膜への明らかなインターフェロンの吸着が認められる。しかも、透析膜へのインターフェロンの吸着の程度は膜により異なる(ポリメチルメタクリレート(PMMA)膜では1時間で91.4%、ポリアクリロニトリル(PAN)膜では65.8%、再生セルロース膜では9.1〜55.0%、セルローストリアセテート(CTA)膜では10.9%[4])。また、ポリスルホン(PS)膜でのインターフェロの消失率は25%と報告されている[3]。以上の報告より、透析患者ではインターフェロンの投与量を減量する必要がある。透析患者では、インターフェロンの投与量を健常人の50%に抑えるのが安全であろう。
最近、インターフェロンαとリバビリン(薬)との併用療法で、従来のインターフェロン単独療法よりも有意に優れたウィルス陰性化率が示された。インターフェロンαとリバビリンの併用療法は、以下のC型肝炎患者に対して承認されている。
1.:血中HCV-RNA量が高値の患者
2.インターフェロン製剤単独療法で無効の患者、又はインターフェロン製剤単独療法後再燃した患者
文献
1.荒瀬康司、他:C型慢性肝炎の治療(原因療法).
メディコピア39, ウイルス肝炎.p.156-161, 協(株)和企画通信,
1999.
2.内原正勝、他:血液透析患者のC型慢性肝炎に対するインターフェロン(IFN)治療----INFα2bの体内動態を中心とした検討. 肝臓, 36: 175, 1995.
3.山口知明、他:血液透析施行中のC型慢性肝炎患者におけるインターフェロンα注(天然型)の血中濃度動態に関する報告. 日本病院薬剤師会雑誌(JJSHP), 38: 187-190, 2002.
4. Yoshizawa E, et al.: Adsorption of interferonα-2b to dialysis membranes in an in vitro study. 透析会誌. 30; 1277-1282, 1997.