18.15 ヘモクロマトーシス
A. ヘモクロマトーシスの発生機序頻回大量に輸血を行ったり、鉄剤を長期大量に投与した患者で、利用されなかった鉄が肝臓、脾臓、骨髄を中心に諸臓器に沈着するために生じる。
B. ヘモクロマトーシスの診断
本症では、肝腫大、皮膚の色素沈着を認める。透析患者に発症するヘモクロマトーシス(鉄の大量投与の結果発症した続発性ヘモクロマトーシス)では、糖尿病を合併することは稀である。検査値では、血清鉄が200μg/dl以上となり、不飽和鉄結合能が著しく低下し、血漿フェリチン濃度は1.000 ng/ml以上となる。肝脾腫の存在、特徴的な検査所見、腹部CT所見によりヘモクロマトーシスを疑う。確定診断は肝生検によりおこなう。
C. ヘモクロマトーシスの治療
瀉血を行うとともに、体内での鉄の利用を促進する。鉄の利用を促進するためには、エポエチンα(薬)やエポエチンβ(薬)などのエリスロポエチン製剤の投与をおこなう。
瀉血は、毎透析後、リンス液と血液の境がダイアライザーの下流側のポッティング部分に達した段階で血液回収を終了することによっておこなう。ただし、充分な量のエリスロポエチン製剤を投与しているにもかかわらず貧血がある症例では、瀉血は行わない。まず貧血の原因(鉄の利用障害)を発見し、これに対する治療をおこなう。
メシル酸デフェロキサミン(薬)により組織内に沈着した鉄をキレートして透析により除去する方法もある。すなわち、週1回の頻度で、5mg/kg あるいはそれ以下の量のメシル酸デフェロキサミンを250mlの5%ブドウ糖液に溶解し、透析終了前1時間で点滴静注する。キレートされた鉄は次回の透析により鉄-デフェロキサミン複合体として除去される。メシル酸デフェロキサミンを用いた治療は数ヶ月間続ける。
メシル酸デフェロキサミンには、網膜障害、聴力障害、肺ムコール症などの深刻な副作用があるので、透析患者での使用には非常に慎重でなければならない。