透析百科 [保管庫]

18.11  針刺し事故、傷口への血液付着などへの対応(C型肝炎)

C型肝炎ウイルス(HCV)陽性の血液に汚染された針による針刺し事故では、感染が成立するかどうかは、汚染源となった血液中のC型肝炎ウイルスの量と、汚染時に被汚染者の体内に入る血液の量によって規定される。感染率は1〜4%とされている。C型肝炎ウイルスに対する中和抗体やワクチンはなく、感染防止法は確立していない。

1.一般的な応急処置

針、メス刃などによる、刺し傷や切り傷の場合には、汚染血液の血中への侵入量を最小限にとどめるため、流水下で受傷部を絞り出すように充分洗浄する。その後、細菌感染防止のため、消毒用エタノール等で消毒する。

 

 

2.汚染源である血液がC型肝炎ウイルス(HCV)に汚染されていた場合の針刺し事故

a. 針刺し事故を起こした本人に対して、事故直後に HCV 抗体検査および肝機能検査(GOT、GPT)をおこなう。この検査で HCV 抗体が陽性であった場合には、キャリアであるかどうかを確認するため、HCV-RNA 検査をおこなう。

b. 針刺し事故を起こした本人がHCV 抗体陰性であった場合には、初めの 3ヵ月間は月1〜2回、その後は月に1回、肝機能検査[AST(GOT) と ALT(GPT)] および HCV-RNA を測定し、6ヵ月後まで経過を観察する。

c. HCV-RNA が検出されれば、感染が成立したと判定する。HCV-RNA は、C型肝炎ウイルスに感染してから1〜2週間後には検出される。なお、HCV 抗体は、C型肝炎ウイルスに感染してから約 3か月間経たなければ検出されない。

d. HCV-RNA が検出されれば、たとえ C型肝炎が発症していなくても、速やかにインターフェロン(INF)治療を考慮し、専門医を紹介する。C型肝炎ウイルスの感染から C型肝炎に移行する前の段階であっても、インターフェロンの投与により C型肝炎ウイルスを排除し得る。なお、針刺し事故の場合、医療関係者に限り労災が適用される。


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