透析百科 [保管庫]


22.3  インスリン製剤の作用時間

腎のクレアチニン・クリランスが15〜20 ml/min/1.3m2以下に低下すると、生体内でのインスリンの分解が著明に遅延し始める[1]。このインスリンの分解の遅延は、尿毒症物質の蓄積により生ずるものであると考えられ、透析療法への導入によりある程度まで改善される[2]。したがって、投与したインスリンの分解の遅延の程度は患者ごとに異なると推測される。

健常人におけるインスリン製剤の作用時間を基に、透析患者に投与したインスリン製剤の作用時間を推定するのが現実的であると考えられる。

健常人では、皮下注射した速効型インスリン製剤(薬)の作用発現までの時間は0.5〜1時間、効果が最大となるまでの時間は3〜5時間、そして効果の持続時間は8時間程度である。したがって、朝食前に投与した速効型インスリンは昼食前に効果が最大となり、昼食前に投与した速効型インスリンは夕食前に効果が最大となる。また、夕食前に投与した速効型インスリンは就寝前に効果が最大となる。

皮下注射した中間型インスリン製剤(薬)の作用発現までの時間は0.5〜2.5時間、効果が最大となるまでの時間は8〜12時間、そして効果の持続時間は24時間程度である。したがって、朝食前に投与した中間型インスリンは夕食前に効果が最大となる。

速効型/中間型混合インスリン(二相型インスリン)(薬)を皮下注射した場合には、作用発現までの時間は0.5〜1時間、効果のピークは3〜5時間と8〜12時間の二相型となり、効果の持続時間は24時間程度となる。すなわち、朝食前に投与した速効型/中間型混合インスリンは、昼食前と夕食前に効果のピークが認められる。

 

腎機能正常患者におけるインスリン製剤の作用時間
インスリン製剤 皮下注での作用時間(hr)
作用発現開始時間 効果のピーク時間 持続時間

速効型

0.5〜1.0 3〜5 8

中間型

0.5〜2.5 8〜12 24

混合型

 0.5〜1.0 ?3〜5
?8〜12
24

 

 

 

文献

1.Mak RH., et al.: Glucose and insulin metabolism in uremia. Nephron 61: 377, 1992.

2.DeFronzo RA., et al.: Glucose intolerance in uremia. Quantification of pancreatic beta cell sensitivity to insulin and tissue sensitivity to insulin. J Clin Invest 62: 425, 1978.

 


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