22.1 血糖コントロールの目標
透析患者では、体内でのインスリンの分解が遅延する。したがって、血糖コントロールのために投与したインスリンの半減期も延長する。体内でのインスリン分解の遅延のため、透析導入後にインスリン投与が不要になることもある。一方、透析患者では、インスリン感受性が低下している。さらに、糖尿病を有する透析患者に胃のぜん動運動の低下(胃不全麻痺; gastroparesis)があれば、食物の胃内への滞留時間が延長し、吸収が遅れ、血糖の変動が不安定になる。
以上のような理由で、糖尿病を有する透析患者では血糖のコントロールの難しいことが多い。そこで、透析患者では低血糖発作の頻発を防ぐために、厳密な血糖コントロールを犠牲にせざるをえない。インスリン非依存型糖尿病(2型糖尿病;成人型糖尿病)の透析患者においては、空腹時血糖の100〜140
mg/dl (腎不全がない糖尿病患者の場合;80〜110mg/dl)、食後
2時間の血糖の 200 mg/dl 以下、そしてHbA1c(NGSP)の
6.9 〜 7.9%(腎不全がない糖尿病患者の場合; 6.9% 以下)をコントロールの目標にする。また、透析患者におけるグリコアルブミン(GA)については、20〜23%
の目標範囲が提案されている(腎不全がない糖尿病患者の場合;19.5%
以下)。
文献
1.Nakao T, et al.: Influence of erythropoietin treatment on hemoglobin A1c levels in patients with chronic renal failure on hemodialysis. Intern Med 37: 826-830, 1998.