糖尿病における脳血管障害の特徴は、小さな梗塞が多発することである。初期には無症候あるいは比較的軽症であるが、発作を重ねるにつれて構音障害や小刻み歩行など、さまざまな神経症状が出現するようになる。病変が多発すると痴呆を呈することもある。
脳梗塞には決定的な治療法がない。脳梗塞の発生予防に主眼を置く。脳梗塞のリスクファクターとそれぞれのリスクファクターに対する対応を以下にまとめる。
1. 高血糖
血糖のコントロールは、最優先されるべき極めて重要な予防手段である。
2. 高血圧
糖尿病患者で脳血管障害が多発する背景には、高血圧の合併がある。収縮期血圧を140〜160
mmHgにコントロールする。糖尿病患者では脳循環の自動調整能が障害されているので降圧は緩徐に行う。
3. 血小板凝集能亢進
糖尿病患者では、通常、血小板凝集能の亢進状態にある。血小板凝集能の亢進に対しては、少量のアスピリンを投与する。
4. 高コレステロール血症
総コレステロール値の上昇およびHDLコレステロール値の低下は、動脈硬化の促進因子である。血清総コレステロール値が220
mg/dl以上であり、かつ男性では総コレステロール値がHDLコレステロール値の6.4倍以上の場合に、女性では5.6倍以上の場合に、高コレステロール血症に対する薬物治療を開始する。