4.30 nPCRを求める簡易式
nPCRを算出するためにしばしば用いられる Shinzato らが報告した式は、nPCR と同時にKt/Vも算出できるようになっているために複雑な形となっている。したがって、Shinzato らが報告した式を用いて nPCR を算出する場合には、既成のソフトウエアが必要である。すなわち、Shinzato らの式は実質的に全体がブラックボックスとなっており、この式をアレンジすることは実際には不可能である。
このような背景の下、最近、山本らは Shinzato らの式を基に Kt/V を切り離して nPCR だけを算出する簡易式を導いた。
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この式は、図1に示すように、目に見える形で表示することができる程度に簡便である。したがって、この式に対しては、制作者以外が創意工夫を施すことも可能である。例えば、Shinzato らの式では、体液量は体重の 58% とされており、これを変更することはできなかった。しかし、山本らの式であれば、体液量を様々な方法で求めた別の数値に入れ替えることができる。なお、図1では、R は透析開始時における血清尿素濃度に対する透析終了時における尿素濃度の比(単位なし)、TD は透析時間(分)、(G/V)1は体重変化を無視した時の尿素産生速度(g/V/分)、(G/V)2は体重変化で補正された尿素産生速度(g/V/分)、Vは体液量(L)、BW は透析終了時の体重(kg)、Δ BW は透析中の体重減少量(kg)、CS1 は週の最初の透析開始時の血清尿素濃度(g/L)を示す(Shinzato らの式では、V=0.58 BW)。
図2に示すように、Shinzato らの式により算出した nPCR と山本らの式により算出した nPCR との間には、きわめて高度の直線関係があった。この結果は、Shinzato らの式により算出した nPCR と山本らの式により算出した nPCR は一致することを示している。 なお、山本らの式を導く具体的な過程については文献[1]を参照されたい。
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図2 山本らの式により求めた nPCR と |
文献
1. 山本達生、新里高弘:nPCRを求めるための簡易式. 日本血液浄化技術学会会誌 20(3): 14-20, 2012.