透析百科 [保管庫]

5.2  PTHの作用

1.PTHの作用
PTHは、腎の近位尿細管に作用して尿中リン排泄を増大させ、また同部位における活性型ビタミンD [ 1,25(OH)2D3 ]の産生を刺激し、遠位尿細管に作用してカルシウムの再吸収を増大させる[1]。しかし、透析患者では、高度の荒廃のため腎はPTHに反応しない。
PTHは、また、骨吸収を促進する。しかし、破骨細胞にはPTH受容体は存在しないことから、PTHは、まず、骨芽細胞に作用すると考えられる。骨芽細胞から破骨細胞へは何らかの情報が伝達されて骨吸収が促進されるのだろう[1]。いずれにしても、PTHは骨の代謝・回転を刺激する。

2.腎不全におけるPTHの目標値
腎不全では、骨芽細胞のPTHに対するレセプターの mRNA の発現が健常人に比較して減少していること[2]などにより、骨はPTHに対して抵抗性を持つようになっている。したがって、腎不全では骨が正常の代謝・回転を維持するのに健常人の2〜6倍のPTH濃度を必要とする[3-5]。

 

 

 

文献

1. 福本誠二:骨・カルシウム代謝調節ホルモン. 日内会誌 82: 1923, 1993.

2. Hoyland JA, et al: Cellular mechanisms of renal osteodystrophy. Kidney Int S73: S8, 1999

3. Sherrard DJ, et al: The spectrum of bone disease in end-stage renal failure-an evolvingdisorder. Kidney Int 43: 436 , 1993.

4. Torres A, et al: Bone disease in predialysis, hemodialysis and CAPD. Evidence for abetter bone response to PTH. Kidney Int 47: 1434, 1995.

5. 秋澤忠男、他:代謝性骨疾患に関する研究. 平成7年度厚生科学研究費補助金長期慢性疾患総合研究事業(慢性腎不全)研究報告書: 29, 1996.


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