5.14 異所性石灰化の病態
異所性石灰化とは、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ハイドアロキシアパタイトなどの結晶が組織に沈着する現象であり、高リン血症、高カルシウム血症がその最も重要な原因である。レントゲン写真で発見できるだけのものから腫瘤を形成するものまで様々な程度の異所性石灰化がある。異所性石灰化は身体の種々の部位に認められる。 肩、肘、手、股関節、膝などの関節や関節周囲に発生する異所性石灰化により、ときに関節が急速に腫脹し、急性関節炎の症状を呈することがある。また関節周囲に腫脹、疼痛、発赤などを呈し、あるいは腫瘤を形成するだけの場合もある。関節内の石灰沈着が、運動時痛や機能障害の原因となることもある。 小動脈の石灰化は、臓器の循環不全の原因となることがある。冠状動脈壁の石灰化は、狭心症や心筋梗塞の原因となり心筋への石灰沈着は、いわゆる透析心の原因のひとつと考えられている。 シナカルセトと活性型ビタミンDの投与により、冠状動脈壁および大動脈弁の石灰化の進行が抑制されるとの報告がある。Raggi らは[1]、活性型ビタミンDが投与されておらず、かつインタクトPTHが300pg/mL以上である患者、あるいはすでに活性型ビタミンDが投与されていて、かつインタクトPTH が150〜300pg/mLである患者に対して、カルシトリオール(薬)の0.5μg相当量 よりも少ない量あるいはアルファカルシドール(薬)の1μg相当量よりも少ない量の活性型ビタミンD製剤とともに、1日あたり30mg 以上のシナカルセトを投与した。その結果、活性型ビタミンD製剤だけを投与した群に比べてシナカルセトと活性型ビタミンDの両方を投与した群で、冠状動脈壁および大動脈弁 の石灰化が少なかったと報告している。
文献 1. Floege J, et al:
Study design and subject baseline characteristics in the ADVANCE Study:
effects of cinacalcet on vascular calcification in haemodialysis patients.
Nephrol Dial Transplant 25: 1916-1923, 2010. |
■カルシトリオール アルカルロール オタノール
■アルファカルシドール アルファロール アルシオドール
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