透析百科 [保管庫]

5.5  二次性副甲状腺機能亢進症の発生機序

副甲状腺への持続的なPTH分泌刺激は、副甲状腺のびまん性過形成をもたらし、やがて結節性過形成へと伸展する。このように過形成に陥った副甲状腺はPTHの自動分泌能を獲得する。二次性副甲状腺機能亢進症の発症である。透析患者における持続的PTH分泌刺激要因には以下のようなものがある。

1. 腎臓におけるビタミンDの活性化障害

活性型ビタミンD は副甲状腺のPTH分泌を抑制する。ところが、透析患者では腎の荒廃のためビタミンDの活性化[ 25(OH)D3から1,25(OH)2D3への変換]能が極めて低下しており、かつ副甲状腺細胞表面では1,25(OH)2D3受容体数が減少している [1]。そこで、透析患者では、活性型ビタミンD によるPTH分泌抑制が低下しており、そのため持続的にPTH分泌が刺激される。

 

2. 血清リン濃度の上昇と血清カルシウム濃度の低下

血清リン濃度の上昇に伴って血清カルシウム濃度は低下する。活性型ビタミンD濃度の低下も血清カルシウム濃度の低下の理由のひとつとなる。血清カルシウム濃度が低下すると、PTHの産生と分泌が刺激される[2]。最近、高リン血症自体も直接的にPTH分泌を刺激することが確認されている[3]。

 

3. 副甲状腺の血清カルシウムへの反応低下

透析患者では、副甲状腺のカルシウム感受性受容体(CaSR)数が減少しているため、低カルシウム血症に対する副甲状腺細胞の感受性が鈍化している[4]。すなわち、より高いカルシウム濃度によってしか副甲状腺のPTH分泌は抑制されない。これは、副甲状腺のPTH分泌が持続的に刺激されていることを意味している。

4つの副甲状腺の腫大の程度には、それぞれ、かなりの差がある。また、腫大している副甲状腺は、組織学的にはびまん性過形成の段階か、あるいは結節性過形成の段階にある。結節性過形成では細胞の増殖能が強く、PTH分泌機能の調節障害も強い。これは、結節性過形成において、びまん性過形成におけるよりも1,25(OH)2D3受容体数が少ないためである [1]。

 

 

 

文献

1. Fukuda N, et al: Decreased 1, 25-dihydroxyvitamin D3 receptor density is associated with a more severe form of parathyroid hyperplasia in chronic uremic patients. J Clin Invest 92: 1436, 1993.

2. Yamamoto M, et al: Hypocalcemia increases and hypercalcemia decreases the steady state level of parathyroid hormone messenger ribonucleic acid in the rate. J Clin Invest 83: 1053, 1989.

3. Lucas PA, et al: 1,25 dihydroxycholecalciferol and parathyoid hormone in advanced renal failure: effect of simultaneous protein and phosphorus restriction. Clin Nephrol 25, 7,1986.

4. Kifor O, et al: Reduced immunostaining for the extracellular Ca2+-sensing receptor in primary and uremic secondary hyperparathroidism. J Clin Endocrinol Metab 81: 1598, 1996


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