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5.7  二次性副甲状腺機能亢進症の内科的治療

この項は、2006年に発表された日本透析医学会の「透析患者における二次性副甲状腺機能亢進症治療ガイドライン」に基づく。

二次性副甲状腺機能亢進症の治療の基本は、まず血清リン濃度が適正値にコントロールされていることを最優先し、その後血清カルシウム濃度を適正値に管理することである。この場合、血清リン濃度の適正値を 3.5〜6.0 mg/dLとし、血清カルシウム濃度の適正値を 8.4〜10.0 mg/dLとする。なお、血清アルブミン濃度が 4.0 g/dL未満の場合には、Payneの式により補正した血清カルシウム濃度、つまり血清補正カルシウム濃度を用いる。

血清リン濃度と血清カルシウム濃度(血清アルブミン濃度が4.0 g/dL未満の場合には血清補正カルシウム濃度)がそれぞれ適正値に保たれていることを条件に、活性型ビタミンD製剤を投与することによりインタクトPTHの低下を図る。この場合、活性型ビタミンDの経口製剤を投与するのではなく、活性型ビタミンDの静脈注射用製剤を投与するのが望ましい(活性型ビタミンD製剤のパルス療法)。静脈注射用製剤は透析中にダイアライザの静脈側から投与する。

 

具体的には、以下の手順に基づいて血清リン濃度と血清カルシウム濃度をコントロールする。

1) 血清リン濃度が6.0 mg/dL以上の場合

まず、血清カルシウム濃度の高低にかかわらず、リン摂取量を減らすための食事指導をおこない、かつ十分な透析量を確保する。

血清カルシウム濃度が10.0 mg/dL以上の場合

炭酸カルシウムの服用が食事中あるいは食直後であることを確認する

・ 炭酸カルシウムを減量または中止し、または塩酸セベラマーに変更する

・ 活性型ビタミンD製剤を減量または中止する

・ 寝たきりなど、高カルシウム血症の原因を検索する

・ 透析液カルシウム濃度の調整

 

血清カルシウム濃度が8.4〜10.0 mg/dLの場合

・ 炭酸カルシウムの服用が食事中あるいは食直後であるかを確認する

・ 炭酸カルシウム・塩酸セベラマーを開始し、または増量する

・ 活性型ビタミンD製剤を減量し、または中止する

 

血清カルシウム濃度が8.4 mg/dL以下の場合

・ 炭酸カルシウムが実際に服用されていることを確認する

・ 炭酸カルシウムを開始または増量する

・ 炭酸カルシウムの増量で血清リン濃度をコントロールできない場合には(炭酸カルシウムの最大投与量は3.0 gとする)、活性型ビタミンD製剤を減量する

 

 

2) 血清リン濃度が3.5〜6.0 mg/dL以上の場合

血清カルシウム濃度が10.0 mg/dL以上の場合

・ 炭酸カルシウムを減量または中止し、または塩酸セベラマーに変更する

・ 活性型ビタミンD製剤を減量または中止する

・ 寝たきりなど、高カルシウム血症の原因を検索する

・ 透析液カルシウム濃度の調整

 

血清カルシウム濃度が8.4〜10.0 mg/dLの場合

・ 現行の治療を続行する(PTHの適正化のための活性型ビタミンD製剤の投与)

 

血清カルシウム濃度が8.4 mg/dL以下の場合

・ 炭酸カルシウムを開始し、または増量する

・ 活性型ビタミンD製剤を開始し、または増量する

 

 

3) 血清リン濃度が3.5 mg/dL以下の場合

まず、血清カルシウム濃度の高低にかかわらず、十分な食事ができているか、または低栄養状態にないか検討する。

血清カルシウム濃度が10.0 mg/dL以上の場合

・ 炭酸カルシウム・塩酸セベラマーを減量または中止する

・ 活性型ビタミンD製剤を減量または中止する

・ 寝たきりなど、高カルシウム血症の原因を検索する

・ 透析液カルシウム濃度の調整

 

血清カルシウム濃度が8.4〜10.0 mg/dLの場合

・ 炭酸カルシウム・塩酸セベラマーを減量し、または中止する

 

血清カルシウム濃度が8.4 mg/dL以下の場合

・ 炭酸カルシウムを開始し、または増量する

・ 活性型ビタミンD製剤を開始し、または増量する

静脈注射用活性型ビタミンD製剤の投与にあたっては、インタクトPTHの目標値を 60〜180 pg/mLとする。血清リン濃度と血清カルシウム濃度を適正値に管理した上でインタクトPTHを目標値まで低下させることができれば、静脈注射用活性型ビタミンD製剤を経口活性型ビタミンD製剤に変えてもよい。

なお、最近、新しい機序による副甲状腺機能抑制薬であるシナカルセトが発売になった。シナカルセトは副甲状腺機能を抑制すると同時に血清カルシウム濃度を低下させる。シナカルセトと活性型ビタミンDとの併用法はまだ確立していないが、インタクトPTHを 500 pg/mL以下に維持しようとすると血清カルシウム濃度がコントロールできなくなるような症例では、シナカルセトの投与を検討してみる価値があると思われる。