5.13 無形成骨の治療
無形成骨は骨折の原因となりうるのか否か、現時点ではまだ結論がでていない。しかし、血清PTH濃度の低い患者に大腿骨骨折や椎骨圧迫骨折が発生したとの報告など、無形成骨が骨折の原因となりうることを示唆する報告が存在する。
無形成骨症では破骨細胞活性も骨芽細胞活性も低下している。すなわち、骨の代謝・回転が著しく低下している。したがって、無形成骨症ではカルシウムやリンを血清から取り込んだり、これらを血清中に放出することにより血清カルシウム濃度あるいは血清リン濃度の変化を緩和する骨の働きが低下している。したがって、無形成骨症ではわずかな量の炭酸カルシウムや酢酸カルシウムを投与しただけで血清カルシウム濃度が上昇し、異所性石灰化の危険が増大する。
無形成骨症の治療目標は、副甲状腺におけるPTHの分泌を増やし、低下した骨の代謝・回転を回復させることである。そのためには、副甲状腺機能を刺激すべく、活性型ビタミンD製剤およびカルシウムを含むリン吸着剤を中止ないし減量する。表には、血清リン濃度別に活性型ビタミンD製剤の使用法を示す。なお、血清カルシウム濃度を低下させるために低カルシウム透析液を使用することを薦める意見もある。
無形成骨の患者へのカルシウム含有吸着剤と活性型ビタミンD製剤の投与法
血清リン濃度 | カルシウム含有リン吸着剤 | 活性型ビタミンD剤 |
6.5 mg/dl未満 | 中止ないし減量 | 中止 |
6.5 〜 7.9 mg/dl | 変更しない | 中止ないし減量 |
8.0 mg/dl以上 | 増量 | 中止ないし減量 |