透析百科 [保管庫]

5.3  PTHの産生・分泌の調整機構

PTHの産生・分泌を亢進させる因子には、(1)低カルシウム血症、(2)血中の活性型ビタミンD濃度の低下、(3)高リン血症がある。

1. 低カルシウム血症

血清中のカルシウム(イオン)は、副甲状腺の細胞膜上に存在するカルシウム感知受容体(Ca感知受容体;Ca-sensing receptor)を介してPTH の産生・分泌を抑制する。一方、血清PTH は、骨からのカルシウムの遊離を促し、腎臓からのカルシウムの排泄を減らして、血清カルシウム濃度を上昇させる。正常では、このPTH の産生・分泌を抑制するカルシウムの作用とカルシウムの血清濃度を上昇させるPTHの作用とが釣り合って、血清PTH 濃度と血清カルシウム濃度が適正なレベルに維持されている。 

ところが、腎不全では、後述するように活性型ビタミンD の欠乏や高リン血症のために、血清カルシウム濃度が低下する。血清カルシウム濃度の低下は、数分間で副甲状腺のPTH の産生・分泌を増大させるが、もし低カルシウム血症が数日間続けば、副甲状腺細胞の増殖が始まる。副甲状腺細胞の増殖は、時間をかけて、やがて副甲状腺のびまん性過形成、さらに結節性過形成へと伸展していく。そして、副甲状腺がびまん性過形成から結節性過形成へと移行するのに従って、副甲状腺の細胞膜上カルシウム感知受容体の数が減少し始める。その結果、PTH の産生・分泌と副甲状腺細胞の増殖を抑制する血清カルシウムの作用が現弱し、二次性副甲状腺機能亢進症へと伸展していく。

 

 

2. 血中の活性型ビタミンD濃度の低下

活性型ビタミンDは、副甲状腺の細胞内に入って細胞内に存在するビタミンD 受容体(Vitamin D receptor)と結合し、核内に移動してPTH 遺伝子を抑制する。言い換えると、活性型ビタミンD が欠乏すると、PTH の産生・分泌は増大する。

透析患者では、ビタミンD の活性化の場である腎臓が荒廃しているため、活性型ビタミンD が欠乏している。そのため、透析患者では活性型ビタミンD 製剤を投与しないかぎり、副甲状腺にPTH の産生・分泌の増加圧力が加わる。

副甲状腺細胞におけるビタミンD 受容体の発現量は、副甲状腺がびまん性過形成から結節性過形成へと移行するのに従って減少する。したがって、結節性過形成にまで伸展した二次性副甲状腺機能亢進症では、活性型ビタミンD 製剤の効果は低下することとなる。

なお、活性型ビタミンD は腸管からのカルシウム吸収を促進して血清カルシウム濃度を上昇させる。このメカニズムによる血清カルシウム濃度の上昇を介しても、活性型ビタミンD は副甲状腺機能を抑制する。

 

 

3. 高リン血症

高リン血症では、リンと結合してリン酸カルシウムを形成し、組織に沈着するカルシウムの量が増えるので、血清カルシウム濃度が低下する。このメカニズムによる血清カルシウム濃度の低下を介しても、高リン血症は副甲状腺におけるPTH の産生・分泌を刺激する。また、高リン血症は、直接的にもPTH の産生・分泌を促進し、かつ副甲状腺細胞の増殖を刺激することが知られている。