5.17 マキサカルシトールおよびファレカルシトリオールの投与法
活性型ビタミンD誘導体マキサカルシトール(薬)およびファレカルシトリオール(薬)は、たとえ1,25(OH)2D3 と同等のPTH抑制作用を示す量を投与しても、1,25(OH)2D3 ほどには血清カルシウム濃度が上昇しないと期待されている。しかしマキサカルシトールおよびファレカルシトリオールのいずれでも、PTH抑制作用と血清カルシウム濃度の上昇作用は共に用量依存性であるようだ。そこで、これらの新しい活性型ビタミンD誘導体を投与するにあたっても、高カルシウム血症の出現には充分な注意が必要である [1]。 注射薬であるマキサカルシトールの初回投与量は、PTH濃度により調節する必要がある [2]。マキサカルシトール の投与を開始する血清PTH濃度に関しては、血清インタクトPTH濃度にして200pg/mlから600pg/mlまで様々な提案がある。その中のひとつに、血清インタクトPTH濃度が500pg/ml以上あるいは血清HS-PTH濃度が40,000pg/ml以上の場合にはマキサカルシトールの初回投与量を10μg、血清PTH濃度が500pg/ml未満あるいは血清HS-PTH濃度が40,000pg/ml未満の場合にはマキサカルシトールの初回投与量を5μgとするという考え方がある。 その後、週1回程度、透析前血清カルシウム濃度を測定し、これが10.5mg/dlを超えたらマキサカルシトールの投与を一時停止し、血清カルシウム濃度が正常範囲(8.5〜10.0 mg/dl)に低下したらマキサカルシトールを半量から再開する。しかし、たとえ高カルシウム血症が出現しなくても血清インタクトPTH濃度が150pg/ml以下となった場合には、マキサカルシトールを休薬する [2]。 経口薬であるファレカルシトリオールの初回投与量は0.3μg/日とする[3]。その後、週1回程度、透析前血清カルシウム濃度を測定し、これが10.5mg/dlを超えたらファレカルシトリオールの投与を一時停止し、血清カルシウム濃度が正常範囲(8.5〜10.0 mg/dl)に低下したらファレカルシトリオールを半量から再開する。しかし、たとえ高カルシウム血症が出現しなくても血清インタクトPTH濃度が150pg/ml以下となった場合には、ファレカルシトリオールを休薬する。 なお、マキサカルシトールやファレカルシトリオールの投与量をコントロールするのに用いる血清カルシウム濃度は、血清アルブミン濃度が4.0 g/dl未満の場合には、Payneの式により補正するのが望ましい。
文献 1. 黒川 清、他: 透析期腎不全患者の二次性副甲状腺機能亢進症に対する22-Oxacalcitoriol (OCT) 注射剤の効果ー前期第・相試験ー(第2報)腎と透析 47:715-737, 1999. 2. 黒川 清、他: 透析期腎不全患者の二次性副甲状腺機能亢進症に対する22-Oxacalcitoriol (OCT) 注射剤の安全性および有効性の検討ー第・相一般臨床試験. 腎と透析 48: 875-897, 2000. 3. 森井浩世、他:血液透析患者における二次性副甲状腺機能亢進症に対するST-630(falecalcitriol)の至適投与量の検討 ------ 後期第II相臨床試験 ------. 透析会誌 30: 895-910, 1997. |