5.6 腎性骨症の分類
腎性骨症とは、腎不全とその治療に起因する代謝性骨疾患の総称である。腎性骨症は、骨組織学的には、(1)線維性骨炎、(2)骨軟化症、(3)無形成骨に分類される。通常、透析アミロイドーシスに起因するアミロイド骨症は別に取り扱われる。
1.線維性骨炎
線維性骨炎はPTHの過剰分泌(二次性副甲状腺機能亢進症)に起因する。すなわち、PTHが過剰に分泌されると骨の代謝・回転が促進し、骨吸収が生じる。そして、そのために生じた空隙では線維化が生じる。この状態が線維性骨炎である。
2.骨軟化症
骨軟化症は、骨の石灰化障害の結果、類骨量が増加した病態を指す。骨の石灰化障害は、活性型ビタミンDの欠乏あるいは骨のカルシウム沈着部位(石灰化前線)へのアルミニウム沈着により生じる(アルミニウム骨症)。
3.線維性骨炎と骨軟化症の混合型
線維性骨炎と骨軟化症の混合型の腎性骨症のみられることもある。しかし、高濃度のPTHはアルミニウム骨症の発生を防ぎ、したがって高度の線維性骨炎の患者ではアルミニウム蓄積に起因する骨軟化症はまれにしか認められない[1]。逆に、副甲状腺摘出術を施行すると、アルミニウム骨症が顕在化する。これは、骨の代謝・回転が低下すると骨梁面にアルミニウムが沈着しやすくなるためである。
4.無形性骨
無形性骨は、破骨細胞活性も骨芽細胞活性も低下し、以て骨の代謝・回転が低下した病態である。
多くの場合、無形成骨では血清PTH濃度が低値を示していることから、無形成骨の成立には活性型ビタミンD製剤の積極的な投与や長期に渡る高カルシウム血症によるPTH分泌の過度の抑制が関与していると考えられている。また、何らかの理由によるPTHに対する骨の感受性の低下も、無形成骨の成立に関係していると考えられている。当然のことではあるが、無形成骨は副甲状腺摘出後のPTHの分泌低下によっても生じる。また、アルミニウム蓄積によって骨のPTHに対する感受性は低下する。
このように、低い血清PTH濃度は無形成骨の存在を強く示唆するが、たとえ血清PTH濃度が高くても、これが必ずしも無形成骨の存在の可能性を否定するものではない。骨生検により血清PTH濃度が高い患者に無形成骨が認められたとの報告がある。
文献
1.Ellis HA, Peart KM: Azotemic renal osteodystrophy; a quantitative study on iliac. J Clin Pathol 26: 83, 1973.