透析百科 [保管庫]

8.2   抗緑膿菌作用のない広域ペニシリン

天然型ペニシリンや耐性ブドウ球菌用ペニシリンは、抗菌スペクトルがグラム陽性菌に限られていたが、その後グラム陰性菌にまで抗菌スペクトルを拡大したペニシリンも開発された。これらの広域ペニシリンの中、緑膿菌にまでは抗菌スペクトルが拡大されていないものに、アンピシリン(薬)(ABPC:経口、筋注、静注)、アモキシシリン(薬)(AMPC:経口)、アスポキシシリン(薬)(ASPC:静注)、シクラシリン(薬)(ACPC:経口)、塩酸バカンピシリン(薬)(BAPC:経口)、塩酸タランピシリン(薬)(TAPC:経口)、塩酸レナンピシリン(薬)(LAPC:経口)がある。

アンピシリンはペニシリンGと同様にグラム陽性菌に対しても有効であるが、A群レンサ球菌や肺炎球菌に対する有効性はやや低い。リステリア菌や多くの腸球菌には有効である。しかし、アンピシリンは多くの場合、βラクタマーゼにより加水分解されるので、インフルエンザ菌、ブドウ球菌の大部分、クレブシエラ属、グラム陰性桿菌による院内感染症の大部分には無効である。アモキシシリンはアンピシリンの誘導体であり、抗菌スペクトラムもほとんど類似している。

アスポキシシリン、シクラシリンはブドウ球菌感染症に対して有効であるが、塩酸バカンピシリン、塩酸タランピシリン、塩酸レナンピシリンはこれに対して無効である。

これらの薬剤は経口的に投与することが多いが、空腹時に服用させた方が吸収がよい。アモキシシリンの消化管吸収はとくに優れている。透析患者においては、投与量あるいは投与間隔の調整が必要である。



投与量
薬剤名 透析患者投与量 健常人投与量
アスポキシシリン(ASPC) 1〜2g/day  

アモキシシリン(AMPC)

250〜500mg/ day 750〜1000mg/ day
アンピシリン(ABPC) 1〜2g/day 2〜4g/day
シクラシリン(ACPC)   750〜1500mg/ day
塩酸タランピシリン(TAPC) 250〜500mg/ day 750〜1000mg/ day
塩酸バカンピシリン(BAPC) 500mg/ day 500〜1000mg/ day
塩酸レナンピシリン(LAPC) 250〜500mg/ day 750〜1000mg/ day