8.3 抗緑膿菌作用のある広域ペニシリン
広域ペニシリンの中、緑膿菌にまで抗菌スペクトルが拡大されているものに、スルベニシリン(薬)(SBPC:筋注、静注)、チカルシリン(薬)(TIPC:筋注、静注)、ピペラシリン(薬)(PIPC:筋注、静注)などがある。これらの抗生物質は、抗菌スペクトルが緑膿菌にまで拡大されている反面、グラム陽性球菌に対する抗菌力は低下している。したがって、ブドウ球菌などのグラム陽性球菌による感染症に投与してはならない。透析患者においては、投与量あるいは投与間隔の調整が必要である。 チカルシリン、ピペラシリンは、緑膿菌や他のグラム陰性桿菌による感染症の治療に選択される。これらの抗生物質は、バクテロイド菌の多くにも有効である。感受性のある緑膿菌、エンテロバクター属、セラチアなどのグラム陰性菌による重症の感染症に対しては、この種の抗生物質とアミノグリコシドとの併用により、相乗効果をはかるべきである。中枢神経系への移行は中等度であるので、髄膜炎の治療には不適切である。アミノグリコシドの作用を化学的に低下させることがあり、同一ラインから同時に静注してはならない。 チカルシリンは腸球菌属や大部分のクレブシエラ属には通常無効である。チカルシリンはまた、1gあたり5.2 mEq のナトリウムを含み、体液過剰が生じやすいことに注意する必要がある。ピペラシリンはクレブシエラに もin vitro で有効である。 |
薬剤名 | 透析患者投与量 | 健常人投与量 |
スルベニシリン(SBPC) | 1g/day | 1〜2gを12hr毎 |
チカルシリン(TIPC) | 透析後に3g | 3gを4hr毎 |
ピペラシリン(PIPC) | 毎透析後に1g、
その上に8hr毎に2g |
2〜6g/day |