8.17 アミノグリコシド系抗生物質
アミノグリコシド系抗生物質には、硫酸ゲンタマイシン(薬)、硫酸ジベカシン(薬)、トブラマイシン(薬)、硫酸シソマイシン(薬)、硫酸ネチルマイシン(薬)、硫酸ミクロノマイシン(薬)、硫酸アミカシン(薬)、硫酸アストロマイシン(薬)、硫酸イセパマイシン(薬)などがある。 アミノグリコシドは、多数のグラム陽性菌と陰性菌に殺菌的に作用する。嫌気的な環境や酸性pHにおいては不活性となるため、嫌気性菌や膿瘍の治療には適していない。アミノグリコシドの種類によって耐性の程度が異なる。そのため、治療に用いる場合には、感受性試験の結果を考慮に入れて薬物を選択する。 アミノグリコシドは(通常βラクタム系抗生物質との併用で)、グラム陰性桿菌による重症感染症の治療に有効である。また、ペニシリン系薬物やアンピシリン、バンコマイシンとの併用で、連鎖球菌、特に腸球菌による心内膜炎の治療にも用いる。 アミノグリコシドは、腎排泄性の薬剤であり、かつ血中濃度の安全域が狭い。また、透析により50%強が除去される。したがって、透析患者では投与量の慎重な調整が必要である。臨床的には、初回に健常人の常用量を投与し、その後は透析終了ごとに常用量の1/2を投与する。その後、2〜3回アミノグリコシドを投与した頃に、透析後の静注終了後30分または筋注後1時間の時点の濃度をピーク値、透析開始時の濃度をトラフ値として、これらが適切となるように投与量を調節する。ピーク値が適切でトラフ値が著しく低い場合には、透析終了24時間目に1/4 量を追加投与する。 ゲンタマイシン、硫酸ジベカマイシン、トブラマイシン、硫酸シソマイシン、硫酸ネチルマイシン、硫酸ミクロノマイシンではピーク値を12μg/ml以下に、トラフ値を2μg/ml以下にする。一方、アミカシン、硫酸アストロマイシン、硫酸イセパマイシンではピーク値を35μg/ml以下に、トラフ値を10μg/ml以下にする。 アミノグリコシドの主な副作用は、腎毒性と耳毒性である。透析患者では耳毒性に注意しなければならない。ときどき聴覚低下の有無をチェックする必要がある。 なお、ストレプトマイシンの適用はペスト、野兎病、ブルセラ症、重症の腸球菌感染症、結核に限られる。
|
薬剤名 | 健常人投与量 |
硫酸アストロマイシン | 400mg を 12hr毎 |
アミカシン | 100〜400mg を 12〜24hr毎 |
硫酸イセパマイシン | 400mg を 12〜24hr毎 |
ゲンタマイシン | 80〜120mg を 8〜12hr毎 |
硫酸シソマイシン | 50mg を 12hr毎 |
硫酸ジベカシン | 100mg を 12hr毎 |
硫酸ネチルマイシン | 2mg/kg を 8hr毎 |
トブラマイシン | 60mg を 8hr毎 |
硫酸ミクロノマイシン | 60mg を 12hr毎 |